薄桜鬼・妄想小説【君の名を呼ぶ】第27話 | 浅葱色の空の下。

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薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。

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前記事のコメント下さった皆さん、ありがとうございましたm(_ _ )m


本当に本当に嬉しかったです。


私なりの総司さんで描かせてもらいたいと思います。

私の脳内にある妄想も吐き出さないと気持ち悪いのでwww







いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。



かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。

















沖田は悩んでいた。



屯所が西本願寺へと移り、一斉に全隊士が健康診断を受けた。


その後、沖田を診た松本により労咳であることを告げられる。


偶然その場に居合わせたのは千鶴だった。

千鶴に口止めした沖田。



『労咳…。死病…か』

確かに松本から伝えられた症状には当て嵌まる。

沖田自身もその事実はすんなりと受け入れられた。




沖田の咳き込む音が部屋に広がる。



『冴…』


気掛かりは恋仲である冴のことだけ。

伝えるならば、自身から伝えたい。


冴は傍にいてくれるだろうか。

いつの間にか冴の存在が自身の大半を占めていることに、改めて気付き目を伏せて静かに笑みをこぼした。


沖田の咳き込む音が再び部屋に広がった。







「沖田さん、お薬をお持ちしました」


「どうぞ」

投げかけられた言葉に応え、沖田は布団に横たわっていた身体を起こす。







千鶴は変わらず忙しく動いていた。


そんな中、目に止まるのは沖田の姿。


池田屋事件の際に沖田に庇ってもらってから次第に沖田にひかれていった。


千鶴をからかったり、意地悪なことを言ったりもするが、

それが沖田なりの気遣いとわかり、千鶴は胸の奥に柔らかく温かいものを感じていた。



忙しい山崎に代わり、沖田に薬を出す役目は千鶴の役割となっている。


些細な言葉を交わす、そのやり取りだけでも千鶴はささやかな喜びを感じていた。


幹部や平隊士、そして千鶴に分け隔てなく接する冴が、沖田の恋仲であることなど、
うぶな千鶴には知るよしもなかった。








土方に呼ばれた冴は土方の部屋に行く途中、不意に沖田の顔が見たくなり部屋の前で止まった。




『あ…誰かいる…?』

耳を澄ませば沖田と千鶴が談笑していた。



冴は障子戸にかけた手をスッと退く。


土方の部屋に向かおうとした時、部屋の中から声が投げられた。



「…忠司くん?」


「…ごめん」

投げられた声にビクンと身体は動きを止め、咄嗟に謝った。



「何か用だった?」


冴は躊躇いがちに障子戸を開ける。


そこには笑みを湛えた二人。



「ううん、用は別にない。顔を見に来ただけ」

冴はその二人の笑顔に応えようとぎこちない笑みを浮かべた。



「入っておいでよ」


「…いい。土方さんに呼ばれてるから行かなきゃ」


「そう」

沖田の言葉をやんわりと断る。


千鶴に視線を向けた冴は口を開く。



「…千鶴ちゃん、総司を宜しくね」


「はい!」

冴の言葉に元気よく満面の笑みで応える千鶴。


冴は口元に笑みを作りながら障子戸を閉める。


静かに小さく息を吐いた。



沖田は眉根を寄せながら障子に映る影を見つめた。





『ああ、可愛いなぁ。人斬りの私は…あんな風に可愛く笑えてるのかな?

総司にはあんなコが…って。ああ、嫌だな、こんな考え。

何度、総司が気持ちを伝えてくれても…。私は…。

総司を信じていないわけじゃなくて…。

…人斬りっていう後ろめたさがある…から?』


冴は自身の胸襟を片手で掴み、廊下を進んでいった。





いつの間にか井戸の傍に来て、俯き、ぼんやりと佇んでいた冴。




「…司」

「…」



「忠司」

「…」



「忠司」

「…っ!!?」

呼ばれていることに気付いた冴はビクンと身体を震わせ、振り返るとそこには斎藤が冴を見据えていた。



「…先ほどから呼んでいた」


「ごめん!!何だった?あ…、そうだ!私、土方さんに…」

慌てて土方の部屋へ駆け出そうとする冴の右手首を斎藤は掴んだ。



「忠司。…何を泣いている?」


「…?!」

斎藤の言葉に目を丸くする冴。


頬に一筋の雫が流れた。


「あ…、ほんと…だね。何、泣いてんだろ。そう、ゴミ!ゴミが入ったんだと思う。
うん、目が…。……痛いし」

笑みを浮かべながら左手で目元を擦る。


「…大丈夫か」


「うん、ありがと。一。もう…行かなくちゃ…わっ!」

笑みを浮かべ斎藤の言葉に応えようとする冴を、斎藤はきつく抱き寄せた。



「…はっ、一??!」


冴は目を見開き、身体を強張らせる。


そして途端に頬は紅潮する。



「…そんな辛そうな顔をするな」

眉間に深く皺を寄せる斎藤。


耳元で囁かれた声に冴は小さく息を吐いた。



「…大丈夫、大丈夫だから。ありがと」

小さく頷きながら、斎藤の胸に手を置き、軽く胸を押した。


ゆっくりと冴を解放する斎藤。


「…ありがと」

斎藤の顔を見上げ、今度は笑みを浮かべながら小さく呟いた。



「ねぇ、一。私ちゃんと笑えてるかな?」


「…ああ」

切なげな、それでいて優しい眼差しを向ける斎藤は短く応えた。


「…良かった。じゃあ、土方さんのところへ行ってくる」

斎藤にふわりと笑い、土方の部屋へと駆け出した。


その後姿を佇んで見つめる斎藤。


深い溜め息を吐いた。








「…総司」


「なぁに、一君。いきなり」

沖田の部屋に入った斎藤は後ろ手で障子戸を閉める。


横たわる沖田を見下ろしながら口を開く。



「忠司と何かあったのか」


「…何もな…」


「俺は忠司の憂う顔など見たくはない」

沖田の言葉を遮るように言葉を吐いた斎藤。


その目は厳しさを携えていた。


沖田は素早く上体を起こす。



「…冴はどこ?」


「…先ほど副長の部屋に行った」


「そっか。…一君、ありがと」

立ち上がった沖田は障子戸を開け、廊下へと出た。


「…何処へ行く」

呼び止めた斎藤の声に、沖田も足を止める。



「冴は甘え方を知らないんだ。迎えに行ってあげないと」


「…」

沖田の姿を見送った斎藤は口を真一文字に結んだ。






廊下を歩いていく沖田を見つけた千鶴が駆け寄る。


「沖田さん、駄目ですよ!お布団に入って休んでいないと」


「…僕は大丈夫だから」

歩みを止めない沖田を千鶴は追いかける。


「でも皆さん心配されます!」


「うるさいなぁ!」

怒鳴られた声に身体をビクンと震わせる千鶴。


「…君、黙ってて。まだやること沢山あるんでしょ?僕に構ってないであっち行ってなよ」

千鶴を軽く睨み、歩みを進める。



「…沖田さん」

眉根を寄せた千鶴はその後姿を見送った。