小説設定はこちらをご覧下さい → ★
第1話はこちらから → ★
いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。
かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。
翌日。
全隊士が広間に召集をかけられていた。
「皆、聞いてほしい。先程の長州藩を京から追い出した際の警備にその働きを評価され、新撰組という名を賜った。
隊士も増えてきたことだし、新たに部隊を組みなおしたいと思っている」
近藤の言葉に広間はざわざわと賑やかになる。
「忠司。俺の部屋に来い」
「はい」
解散したあと、土方に呼ばれ、土方の部屋に向かう。
土方の部屋で冴を見据える土方が口を開く。
「お前を組長にしたいと思っている」
「私を…ですか?」
土方の言葉に目を丸くした冴。
「お前の実力は皆認めている。組長にしても問題はねぇ。最近は血に酔うこともないみたいだしな」
「…」
土方の言葉に口を真一文字にして袴を握った。
「やってくれるか」
「はい。…ただ、条件を一つ飲んでくださいませんか」
土方と視線が交わる。
「聞くだけ聞いてやろう」
目を伏せた土方。
「四番組の組長にしてください」
「…何でだ」
表情は変えず、視線を冴に向ける。
「…『死』番組だからです」
「…」
「もし組長にして頂けるなら誰か他の人に背負わせたくないんです。私が背負いたい」
『自分が背負うことで、他の幹部始め、隊士たちが無事であることを祈りたい』
その想いを噛み締めるように言葉を紡ぐ冴。
「…随分と縁起事を気にするんだな」
小さく息を吐いた土方が口元に笑みを浮かべた。
「そういうわけではありませんよ」
応えるように土方に笑いかける。
「わかった。お前には四番組を任せる」
「ありがとうございます」
手をつき、深く頭を下げた冴。
「明日皆に召集をかけて、全隊士に新しい体制を伝える」
「はい」
土方の言葉に冴は力強く頷く。
「それと…。組長になるお前に伝えておかなきゃならないことがある。
今から言うことは幹部しか知らないことだ。幹部以外への他言は禁ずる」
「はい…」
それから土方から「もう一つの新撰組」、後の『羅刹』についての説明を受ける。
幕命であること、『変若水』を研究していること、研究材料として重症や致命傷を負った隊士を利用しているということ。
そこで冴は綱道の存在の意味を理解した。
「まだ完璧なもんじゃねぇ。血を飢えたみたいに暴走しやがる。暴走したら手のつけようがないからな。
あいつらは傷の治りが早い上に簡単には死なねぇ。殺すなら心の臓を狙え」
「…はい」
「…何かあるか?」
「…その存在は正しいことなんでしょうか」
冴は静かに土方を見つめる。
「…正しい、正しくないかは俺達が判断することじゃねぇ。幕命だからな。
…深く考えるな。お前の悪いところは深く考えすぎることだ。」
「…はい」
静かに視線を落とした冴。
土方は一つ大きく息を吐いた。
「話を変える。松原、明日になったら部屋を移動しろ」
「え?…ああ、そう…です…ね」
その言葉に眉を上げた冴は戸惑ったように言葉を泳がせた。
「実力もあって組長になったお前に手を出してくるやつなんざいねぇだろ。
ましてや組長が二人同室なんざ、おかしいだろうが。そう思わねぇか?」
冴を見やり鼻で笑う土方。
「…はい」
小さく頷く冴。
「話は終わった。下がれ」
「失礼します」
深々と頭を下げ、退室する。
廊下を歩いているとと自室から出てきた近藤と会う。
「近藤さん!」
「ああ、松原くん。…歳から聞いたか?」
「…組長のことですか?はい、伺いました」
「そうか。頑張ってくれ。君の力が必要だ」
近藤は口元に笑みを浮かべ、一つ頷く。
「非力な私ですが、新撰組のため、お力添え出来る様頑張ります」
冴は近藤の笑みに応え、頭を深く下げた。
部屋に戻った冴。
「…総司、いたんだ」
「ん。土方さん何て?」
座って壁にもたれていた沖田と目が会う冴。
「…組長にしてくれるって」
沖田と会話しながら押入れに向かい、開ける。
「そ。冴なら大丈夫じゃない?きっと僕よりもいい組長になるよ」
口元に笑みを浮かべる。
「ありがと」
開けた押入れの前に座りながら、顔を沖田に向け笑顔で返す。
「…それだけ?」
「…あとは…『もう一つの新撰組』について聞かされた」
視線を外し、少し俯く。
「そう」
「総司は見たことあるの?」
「うん、あるし、処分もしたよ」
「そっか…」
深く重い溜め息を吐く冴。
押入れに向かい座りなおし、ひとつ、深呼吸をして押入れから風呂敷を取り出す。
風呂敷を広げ、自身の持ち物を乗せていく。
「…何で荷物まとめてるの?」
「明日部屋移動しろって」
背中で応える冴。
「…何で?」
「…だって組長って自室が持てるし…」
「…ああ、そっか」
沖田は立ち上がり冴の背後に身を寄せる。
「僕の隊から抜けるって事は冴に何かあった時、僕はすぐ守れないってことだ。
僕の背中を守ってくれる冴がいなくなるってことだ。
部屋が別になるってことは…こうやって冴を抱きしめたい時にすぐ側にいないってことだ」
冴を後ろから抱きしめ、首元に顔を埋める。
「…そう…だね。でも総司、同じ屯所にいるから…」
「嫌だ。今から土方さんの所へ行って…」
その言葉に冴は沖田に背を預け、頭をこつんと寄せた。
「総司。駄々こねないの」
「…冴は寂しくないの?」
顔を上げて、冴の顔を覗き込む。
「寂しくはないかな。同じ屯所にいるわけだし。少し離れてても総司の存在が私を支えてくれてるし。…ただ…」
視線を逸らせて、呟く冴。
「…ただ?」
「毎日総司と一緒に寝れないのが一番寂しいかも」
再び視線を沖田と交わらせ、少し眉根を寄せて、口元にじんわりと笑みを浮かべた。
「…何でそんな可愛いこと言っちゃうわけ?」
「わ。待って、ん…」
眉をあげた沖田がすぐさま冴の口を塞ぐ。
「今日は朝まで寝かせないから」
口元に三日月を作る。
「それは流石に明日の隊務に支障が出る…」
溜め息混じりに眉根を軽く寄せた冴。
「冴のことが好きだからしょうがない」
「…ん」
交わし求める唇から吐息が漏れる。
「冴、寂しくなったらいつでも部屋に来て。僕も行くから」
「うん、ありがと」
笑みを浮かべた冴は沖田の頬を両手で包み、自ら沖田の唇に自身の唇を重ね、舌を絡めた。