薄桜鬼・妄想小説【君の名を呼ぶ】第14話 | 浅葱色の空の下。

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薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。

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第1話はこちらから → 








いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。



かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。












平隊士の中でめきめきと頭角を現していく冴。


反面、明朗な性格だった冴の瞳には人を斬るごとに憂いを灯すようになっていく。


それと共に冴から醸し始める色香。






戦いの際に隊服をはためかせ、敵方を次々と倒していく様はまるで舞っているかのようだった。


敵や味方をも、魅了しながら刀を振るう。





「沖田さん!松原くんが橋の上で浪士共に囲まれてます!」

一番組隊士が浪士たちと戦いながら声を上げる。


「あれくらいなら大丈夫。君は自分の心配をしてなよ」

鍔迫り合いしながら口元に三日月を浮かべて、ちらりと横目で冴を確認する。


「余所見してんじゃねぇ!」

突進してくる浪士を容赦なく斬りつける沖田。



「自分は加勢に!!…あ…」

自身の相手していた浪士を倒し、冴の元へ駆けつけようとした隊士が状況を見て足をすくめた。






敵の隙間を縫うように走り回り、刀を掲げ、舞うかのごとくに振りかざし、斬り付ける。


あっという間に冴の足元には囲んでいた不逞浪士たちが次々と倒れていく。


冴だけが円の中心で立ち、鉢鐘の紐が風に遊ばれる。





「…牛若丸のようですね」

隊士が息を飲み、感嘆を上げた。


「…僕には羽化した蝶に見えるけど」

眩しそうに冴を見つめた沖田。



「さて、終わったかな…」

視線を周囲に向ける。



状況が静粛し、現場には浪士たちが倒れ血の匂いが立ち込めていた。



もう一度冴に視線を向けると、橋の上でゆらゆらと身体が揺れていた。



「松原くん!」


「あ、君。近づかないで。今行くと君が斬られるよ。多分血に酔ってる」


「え…?」


「僕が行く」

隊士の肩をポンと叩き、歩みを進めた。




人の気配に気付いた冴は振り向き様にうっすらと笑みを浮かべ、沖田に向け刀を振りかざす。


「やっぱりね。でも組長に刀を向けるのはよろしくないんじゃない?」

飛び込んできた冴の刀を受け、鍔迫り合いをする。

力を受け流し冴が少しよろめいたところを、他の隊士たちからは見えぬ角度で、
横から抱えるように抱きしめた。





「冴、戻っておいで」


耳元で囁き、すぐさま冴に口付けた。



「…?」

うっすらと開いた口元に舌を滑り込ませ、舌を絡め取っていく。



「…?!!!」

冴が目を見開き、沖田が唇を離した。



「…なっ!…何をっ!!」

状況が分からない冴は沖田の腕の中で狼狽する。


「おかえり」

口元に笑みを浮かべる沖田。



「…へ?」

その言葉に目を丸くする冴。


「血に酔ってたんだよ。自我を失ってた。さ、帰ろうか」

冴を腕から解放してポンと肩を叩き、待っている隊士たちの元へ歩みを進める。



「…」


「…どうしたの?顔が真っ赤だよ?」

斜め後ろの冴を振り返りながらクスクスと笑った。




「あの…何で…あんなこと…?」

屯所に戻る道中、隣を歩く沖田に冴は小さく問いかけた。


「ああでもしなきゃ、飛んでた意識が戻ってこないかと思って」

前を向いて満足げに笑う沖田。


「…そ…か…」

軽く俯いた冴は自身の頬が赤くなるのを感じた。







巡察から戻り、湯浴びを済ませ、部屋に戻ろうとしていた時、廊下の影から見慣れぬ男が現れた。



「見慣れない顔だな。新しく入った隊士か?」


「…はい。松原忠司と言います。失礼ですが貴方は…」

軽く会釈をしてその男を見つめる。


冴に笑顔を向けているが、目の奥に何かを秘めている気がして胸がざわついた。



「雪村綱道さんですよ。松原君」

二人の間に入ったのは綱道の後ろから現れた山南だった。


「山南くん」

「すみません、松原くんは入ったばかりなので」

「いや、構わん」

綱道は山南に向けて微かな笑みを浮かべる。


「こう見えて、松原くんはとても腕の立つ方なのですよ」

「山南さん、そんな…」

思いがけない山南の褒め言葉に首を横に振る。


「ほう。では死してなおこの壬生浪士組に尽くせると言うわけだ」

冴を見やり、にやりと口角を上げる綱道。

その言葉に冴は眉根を寄せる。


「綱道さん」

綱道の言葉をやんわりと遮る山南。


「ははは。そうでしたね。失礼。ではまたな、松原くん」


「…はい、失礼します」

踵を返す二人の後姿を冴は見つめていた。






「…どうしたの?」

「今、雪村さんという方にお会いして…」

後ろから声をかけられ沖田に顔を向けるも、またすぐに二人の消えていった廊下の先を見つめた。



「ああ、綱道さん。どうかした?」


「…何か、あの人、苦手です」

呟いた冴の横顔を見ながら沖田は眉を上げる。


「…君がそんなこと言うなんて珍しいね」


「…あの方は何をされてるんですか?」


「…。…蘭学者だよ。ちょっと壬生浪士組に力を貸してもらっていてね」


「へぇ…」


「さ、行こう」

「はい」

視線を沖田に向け、冴は口元に笑みを浮かべた。






部屋に戻り後ろ手で障子戸を閉める沖田。


「きゃっ!」

引き寄せられたかと思えば、すぐさま抱きしめられる。


冴は巡察での口付けを思い出して顔をみるみる紅潮させる。



「冴」

呼びかけにゆっくりと顔を上げると優しい口付けが舞い降りた。


「…」

沖田がそっと口から離れれば、冴は困惑した表情を浮かべている。



「冴、口付けの時は目を閉じるか伏せるものだからね」

クスリと笑う沖田。


「…あの…何で…」

戸惑いながら沖田に問いかける。



「僕が君を好きだから」


「っ!!!」

目を丸くしてすぐさま俯く。



「もう一度してほしいの?」

「…もういい…」

俯いたまま、首をふるふると横に振る冴。



「僕はしたい」


冴の顎を指で軽く持ち上げ、口付ける。


冴は恥ずかしそうにゆっくりと目を伏せた。


冴の唇を割って、沖田の舌が口内に侵入してくる。



「…!」

驚いた冴は沖田を突っぱねようとするも、沖田は更に抱き寄せ冴の舌を絡め取った。

口内を暴れる沖田の舌に戸惑うばかりの冴。



部屋に液を含んだ音が広がる。


息苦しさから冴から吐息が漏れる。


身体を硬直させていた冴から少し力が抜けるのを感じた沖田がようやく口を解放する。




赤い顔で瞳を潤ませている冴を見てクスリと笑う沖田。



「…冴は僕が嫌い?」

胸元にいる冴を見つめながら問いかける。


「…嫌い…じゃない…」

沖田から視線を逸らせて呟くように答える冴。



「僕といると居心地悪い?」

「…悪く、ない」


「それってどういうことだと思う?」

「…でもっ!」

眉根を寄せて沖田の着物をぎゅっと掴み沖田を見つめた。



「こんな気持ち…駄目だと思う…」

俯いて言葉を零す。



「どうして?」


「だって…」


「もっと強くなれる気がしない?」


「え…」

沖田の言葉に顔を上げて見つめる冴。


そんな冴に沖田はふわりと笑う。



「僕が冴を守ってあげる。冴は僕と共に戦って欲しい」


「…!」

その言葉と表情に胸が一段と跳ねた。



「ね?」


「…うん」

眉根を寄せて、小さく頷いた。



「冴の気持ち、冴の口から聞きたい」


「…」


目を泳がせながら恥ずかしそうに唇を食む。


意を決したように沖田を見つめる。



「…総司が…好き」

「うん」

沖田は嬉しそうに頷いて、冴の唇に軽く口付けを落とす。


「僕の真似をしてごらん?」

そう言った沖田は冴の後頭部を右手で包み、左腕は腰に回した。


「…ん」

短く応えた冴に笑いかけながら、また深い口付けへと誘っていく。



冴も沖田の想いに応えようと躊躇いながらも舌を絡ませていく。



湿った音と互いの吐息。


混ざった唾液をコクリと飲み干す。



冴はどこか頭の中が白くなってしまうような感覚を覚えながら、
身体中に広がる甘い疼きに戸惑いを覚えていた。



「可愛い顔」

ようやく解放した冴の顔を見て、くすりと笑う沖田。

赤い顔で静かに息を整える冴の口元から零れた雫を親指の腹で拭う。



「冴、明日は非番だし冴の実家に行こうか」

「…いいの?」

眉を上げる冴。


「だってこの間も家が心配って言ってたでしょ?」

「…うん」

小さく頷く。


「じゃあ、行こう。土方さんには僕が許可を取っておくから」

右手を冴の頬に添えて、口元に笑みを浮かべる沖田。


「ありがと。嬉しい」

沖田に応えるように冴も笑みを浮かべ、それを見た沖田はまた口付けを落とし抱きしめた。