薄桜鬼・妄想小説【君の名を呼ぶ】第7話 | 浅葱色の空の下。

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薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。

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いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。



かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。

















季節が初夏に向けて動き出したころ。

洗濯物を取り入れ、お勝手に向かおうとしていた冴。





「あ…」

視線の先には居合いの稽古をする斎藤がいた。




『やっぱり綺麗な型』

斎藤の佇まいに小さく息を吐く冴。



「…どうした?」

冴に気付いた斎藤が声をかける。



「ちょっと見学していい?…ですか?」

「ああ、構わん」

「ありがとう…ございます」


冴は斎藤の稽古を縁側に腰掛けてずっと真剣に見続けていた。





「凄いなぁ。見惚れる」


斎藤が一息ついたのを見て、感嘆をあげる冴。



「…」

「綺麗な切り口」

斎藤の切った竹に歩み寄り、切り口を指でなぞる。



「…やってみるか?」


「いいの?!」

斎藤の言葉に途端に目を輝かせた。



冴は斎藤の見よう見まねで居合いをする。



「…悪くはない。が…」

斎藤の指導の言葉を真剣に聞き入る冴。


その斎藤の言葉をすぐ体現出来る冴に、斎藤も胸の内で驚いていた。






「楽しい。また教えてもらってもいい?…ですか?」

「構わない。…稽古などは簡単にこなしていくが、言葉がまだ不慣れなようだな」

冴の言葉に目を伏せながら口元に笑みを浮かべる斎藤。


「一番難しいかも」

眉根を寄せながらも冴は斎藤に笑みを向けた。



「あ、まだやらなきゃいけないことあるんだった。失礼します!」

目を丸くし、慌てて斎藤に頭を下げる。

「ああ…」


「よく働くやつだ…」

走って立ち去る冴を見送りながら、斎藤は笑みを浮かべながら小さく息を吐いた。










その日は穏やかながらも少し風の強い日だった。

稽古の始まり、永倉の声が響いた。



「おーし!今日は先月新しく入った隊士たち10名の試験を行う。
合格した奴はいよいよ巡察に出れるってことだな。

相手は幹部だ。時間は無制限。相手した幹部が終わりを判断し、判定する。わかったな?」

「はい!」

威勢のいい声が道場を揺らす。


「じゃあ、まずはお前。相手は…」

並ぶ幹部を見やる永倉。


「俺が行く!」

幹部の集まる中から威勢よく飛び出してきた藤堂。


「お前らの気合見てたら身体が疼いてきた。よぉーし!かかってこい!」

口角を上げ、木刀を構えた。






始まると隊士は果敢に向かい合う藤堂を攻めていった。


それ以上に藤堂が出す鋭い気迫が道場を包んだ。


暫く相手をするも、藤堂は木刀をおろした。


「んあ~。お前気合はいいんだけどな。もうちょい基本からやった方がいい。
今回は不合格。次頑張りな」

「なっ!俺はまだやれます!」

「じゃあ、お前呆気なく死んじゃうぜ?」

食いつく隊士に木刀を自分の肩に乗せて軽く応える藤堂。


「…わかりました」

「納得出来るまで稽古つけてやるから!」

ニカっと笑い、隊士の背中をバシッと叩いた。





「じゃあ次は…」

「…俺が行く」

斎藤が一歩出る。



「これは稽古ではない。本気で来い」

相手をする隊士を前にして、斎藤の静かながらも凛とした声が広がった。




時間無制限。


二人目でその意味が明確に分かる。


藤堂の時と同様、これまでの稽古とは桁違いの緊張感と張りつめた空気。


そして斎藤から放たれる、身も凍りそうな気迫。


隊士は声を出し、己を奮い立たせ、立ち向かう。




「どうした。俺は本気で来いと言ったはずだ」

鍔迫り合し、睨みつけながら力負けした隊士をなぎ払う。



何度も倒されても制止はかからない。


隊士は食い下がり立ち向かっていくしかない。


そのうち、斎藤の額からも玉の汗が噴き出すが、表情は変わらぬまま。


それに対し、相手の隊士は肩で息をしている状態だった。




遂に隊士は倒れこみ、それでも木刀を握りなおし、立とうと力を込める。


そして斎藤を睨む。


その様を見た斎藤が構えを解いた。



「…合格だ」


「え…」


「立てるか?…いい気迫だった」

隊士に手を差し伸べる斎藤。


「…ありがとうございます!」

息をあげる隊士は嬉しそうにその手を取った。






その後も新人隊士たちの試験は続いていく。



「最後は松原だな。おし、俺が…」

永倉が一歩踏み出したとき。


「新八さん、僕が行くよ」

壁にもたれて腕組をしていた沖田が制止する。


「…珍しいじゃねぇか」

沖田を見て、ニヤリと笑う永倉。


「他にも相手して疲れてるでしょ?」

「人のせいにするんじゃねぇよ。…手加減してやれよ?」

「まさか」

口元に笑みを浮かべて道場中央に歩みを寄せた。





「さあ、始めようか。僕を殺す気でおいで。本気で来なきゃ僕が君を殺すよ?」


「…はい」

凛とした表情で沖田を見つめる冴がいた。