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いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。
かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。
季節が初夏に向けて動き出したころ。
洗濯物を取り入れ、お勝手に向かおうとしていた冴。
「あ…」
視線の先には居合いの稽古をする斎藤がいた。
『やっぱり綺麗な型』
斎藤の佇まいに小さく息を吐く冴。
「…どうした?」
冴に気付いた斎藤が声をかける。
「ちょっと見学していい?…ですか?」
「ああ、構わん」
「ありがとう…ございます」
冴は斎藤の稽古を縁側に腰掛けてずっと真剣に見続けていた。
「凄いなぁ。見惚れる」
斎藤が一息ついたのを見て、感嘆をあげる冴。
「…」
「綺麗な切り口」
斎藤の切った竹に歩み寄り、切り口を指でなぞる。
「…やってみるか?」
「いいの?!」
斎藤の言葉に途端に目を輝かせた。
冴は斎藤の見よう見まねで居合いをする。
「…悪くはない。が…」
斎藤の指導の言葉を真剣に聞き入る冴。
その斎藤の言葉をすぐ体現出来る冴に、斎藤も胸の内で驚いていた。
「楽しい。また教えてもらってもいい?…ですか?」
「構わない。…稽古などは簡単にこなしていくが、言葉がまだ不慣れなようだな」
冴の言葉に目を伏せながら口元に笑みを浮かべる斎藤。
「一番難しいかも」
眉根を寄せながらも冴は斎藤に笑みを向けた。
「あ、まだやらなきゃいけないことあるんだった。失礼します!」
目を丸くし、慌てて斎藤に頭を下げる。
「ああ…」
「よく働くやつだ…」
走って立ち去る冴を見送りながら、斎藤は笑みを浮かべながら小さく息を吐いた。
その日は穏やかながらも少し風の強い日だった。
稽古の始まり、永倉の声が響いた。
「おーし!今日は先月新しく入った隊士たち10名の試験を行う。
合格した奴はいよいよ巡察に出れるってことだな。
相手は幹部だ。時間は無制限。相手した幹部が終わりを判断し、判定する。わかったな?」
「はい!」
威勢のいい声が道場を揺らす。
「じゃあ、まずはお前。相手は…」
並ぶ幹部を見やる永倉。
「俺が行く!」
幹部の集まる中から威勢よく飛び出してきた藤堂。
「お前らの気合見てたら身体が疼いてきた。よぉーし!かかってこい!」
口角を上げ、木刀を構えた。
始まると隊士は果敢に向かい合う藤堂を攻めていった。
それ以上に藤堂が出す鋭い気迫が道場を包んだ。
暫く相手をするも、藤堂は木刀をおろした。
「んあ~。お前気合はいいんだけどな。もうちょい基本からやった方がいい。
今回は不合格。次頑張りな」
「なっ!俺はまだやれます!」
「じゃあ、お前呆気なく死んじゃうぜ?」
食いつく隊士に木刀を自分の肩に乗せて軽く応える藤堂。
「…わかりました」
「納得出来るまで稽古つけてやるから!」
ニカっと笑い、隊士の背中をバシッと叩いた。
「じゃあ次は…」
「…俺が行く」
斎藤が一歩出る。
「これは稽古ではない。本気で来い」
相手をする隊士を前にして、斎藤の静かながらも凛とした声が広がった。
時間無制限。
二人目でその意味が明確に分かる。
藤堂の時と同様、これまでの稽古とは桁違いの緊張感と張りつめた空気。
そして斎藤から放たれる、身も凍りそうな気迫。
隊士は声を出し、己を奮い立たせ、立ち向かう。
「どうした。俺は本気で来いと言ったはずだ」
鍔迫り合し、睨みつけながら力負けした隊士をなぎ払う。
何度も倒されても制止はかからない。
隊士は食い下がり立ち向かっていくしかない。
そのうち、斎藤の額からも玉の汗が噴き出すが、表情は変わらぬまま。
それに対し、相手の隊士は肩で息をしている状態だった。
遂に隊士は倒れこみ、それでも木刀を握りなおし、立とうと力を込める。
そして斎藤を睨む。
その様を見た斎藤が構えを解いた。
「…合格だ」
「え…」
「立てるか?…いい気迫だった」
隊士に手を差し伸べる斎藤。
「…ありがとうございます!」
息をあげる隊士は嬉しそうにその手を取った。
その後も新人隊士たちの試験は続いていく。
「最後は松原だな。おし、俺が…」
永倉が一歩踏み出したとき。
「新八さん、僕が行くよ」
壁にもたれて腕組をしていた沖田が制止する。
「…珍しいじゃねぇか」
沖田を見て、ニヤリと笑う永倉。
「他にも相手して疲れてるでしょ?」
「人のせいにするんじゃねぇよ。…手加減してやれよ?」
「まさか」
口元に笑みを浮かべて道場中央に歩みを寄せた。
「さあ、始めようか。僕を殺す気でおいで。本気で来なきゃ僕が君を殺すよ?」
「…はい」
凛とした表情で沖田を見つめる冴がいた。