薄桜鬼・妄想小説【君の名を呼ぶ】第3話 | 浅葱色の空の下。

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薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。

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第1話はこちらから → 








いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。



かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。


















冴の家に着くころにはとっぷりと陽も暮れた。

春とはいえ、山深いこの場所はまだ冬の名残を含む風が吹き、山特有の寒さも冷たさを増していた。



「へぇ~。ここが君の家なんだ。かなり遠かったね。何で近藤さんこんなところまで迷っちゃったのかな」

沖田が周辺をきょろきょろとしながら言葉を零す。



「何もないけど…。今、灯りをつけるから…」

冴は暗い部屋に火を灯していく。


「あ…火鉢お願いしていい?」

「ああ、構わない」

斎藤が応える。


「急いで夕餉作ってくるから」

「気にするな」

お勝手へ駆け出した冴を言葉で制止する斎藤。


「…どうして?」

「君が何者かわかったもんじゃないしね。何か思惑があって近藤さんに近づいたのかもしれないし?」

沖田は口角を上げて冴を見やった。

「俺達はお前を信用していない」

前髪の隙間から見える静かな目で冴を見据える。


「…そう。でも…何か食べないと…。あ…じゃあ見張ってて?それなら食べてくれるよね?」

「…わかった。夕餉は俺が手伝おう。総司、あんたは火鉢を頼む」

軽く溜め息を吐いて、斎藤は言葉を投げた。


「…湯浴びはどうする?」

「…」

黙り込む沖田と斎藤。

「今日は稽古で汗を掻いたでしょ?山は冷えるから…」

冴は眉根を寄せて二人を見やる。


「じゃあ、君の湯浴びは僕が見張ってあげる」

クスクスと笑いながら冴を見る。

「っ?!!…好きにして」

沖田の言葉に驚いた冴は視線を反らして言葉を投げた。


「では総司。火鉢の後は風呂を頼む」

「何だかお客様なのに使われてるよね、僕達」

沖田はわざとらしく大きく溜め息を吐く。

「事情が事情だ。仕方ないだろう」

沖田の言葉に目を伏せる斎藤。





夕餉は野菜の煮物、野菜の漬物、味噌汁が取られた。

食事を済ませた後。


「独りで住んでるから…こんなものばかりでごめんなさい」

箸を置きながら申し訳なさそうに呟く冴。

「気にするな」

斎藤も箸を置き、冴を見やる。


「君、料理上手なんだね。美味しいかったよ」

「…ありがとう」

沖田の言葉に冴は自然と笑みが零れた。


「…嬉しそうだね?」

「…。こうやって誰かと…食事を取るのも久しぶり…。その前は…ずっと祖父と二人だったから」

寂しげに床に視線を落とす冴。


「両親は?」

「小さいときに…流行り病で…」


「おじいさんは?」

「半年ほど前に…」


「身寄りは?」

「…いない。ここで独り…生きてきた」


「稽古は?」

「…祖父に…。亡くなってからは独り」


斎藤は沖田と冴のやりとりを静かに見つめていた。



部屋に沈黙が訪れれば、炭の爆ぜる音を耳が捕らえる。



斎藤が部屋を見やっていると刀が3本置かれていた。

「…あの刀を見ていいか?」

「あ…、うん」

斎藤が立ち上がり、刀を手に取り、鞘から抜いてみる。


「…きちんと手入れされているな。これが祖父が使っていた刀か?」

刀を翳して色んな角度から刀を見ていく。

「…うん」

「手入れは松原がやっているのか?」

「そう」

コクリと頷く冴。


「で、こっちが脇差」

脇差を手に取った沖田が鞘から抜き、翳す。

「ああ、そちらもいい状態だな」

静かに頷く斎藤。


「刀が好きなの?」

「何ゆえ、そのようなことを…」

斎藤は冴の言葉に微かに動揺した。

その様を見た沖田がクスクスと笑う。

「刀を見る目が優しいから」

冴は斎藤にふわりと笑った。

斎藤は冴から素早く目を逸らし、刀に視線を向けた。



最後の刀を手に取り、鞘から抜く。


「これは…」

「通常の刀よりは若干細いね」

「しかも軽い…」

斎藤は沖田の言葉に頷き、呟いた。



「どういうことだろうね」

「…祖父の意思が込められているのかもしれんな」

柄から舐める様に刀を見つめながら沖田の言葉に応える斎藤。

「へぇ…」

沖田も斎藤と同じように刀を見つめる。



「…おじい様の…意思…?」

眉をあげて斎藤の言葉を反芻する冴。

「身寄りもなく一人になるであろうお前に、この刀で身を守ってほしいと願っていたのかもしれない。…俺の推測に過ぎないが」

刀を鞘に戻しながら斎藤が答える。

「…」

冴は斎藤の言葉に刀に視線を注いだ。



「君、僕達に聞いておきたいこととかないの?」

沖田が座りながら冴に問いかける。


「あの…、きちんと…話せてるかな?」

冴は俯き加減に床に視線を泳がせながら二人に問いかける。


「どういうことだ」

「…。あの…今まで祖父と二人でいたし…、祖父が亡くなってからは…。
今日みたいにいっぺんに沢山の人と話したのは初めてくらいで…。きちんと話せてるかどうか…」

恥ずかしそうに顔を少し赤らめ、自身の着物を軽く握った冴。


「大丈夫だよ。ただ敬語は出来てないし態度もでかいね?」

「…あー…」

沖田の言葉に小さく溜め息をつき、頭を軽くかいた。


「君はそれでいいんじゃない?それが君でしょ?」

「…」

冴は眉をあげたが、沖田の笑みを見て視線をそらせた。


「俺達に気遣うことはない。もし入隊となれば局長や副長、総長には気遣ってもらいたいがな」

「…はい」

斎藤の言葉に小さく頷く冴。



「他に質問は?」

「…壬生浪士組って…何…?」

冴は申し訳なさそうに問いかけた。

「うん。不逞浪士たちを取り締まっているんだよね。簡単に言えば人斬りだよ」

沖田は笑顔で応える。


「…人斬り?…何のために…?」

「総司、言葉を選べ。俺達の任務は京で活動する不逞浪士や倒幕志士の捜索や捕縛、
担当地域の巡察と警備が主な活動となる」

沖田を嗜め、淡々と答える斎藤。


「…」

冴はその事の重さに息を飲んだ。


「そのために任務をこなしながら今日のような隊士を募集をかけたり、日々稽古に励んでいる」

「…壬生浪士組に…私は必要…?」

斎藤の言葉に頷き、恐る恐る問いかける冴。


「それは随分と自分を買い被っている言葉だね」

冴の問いに沖田は眉を上げた後、軽く目を細めた。

「でもまあ、…近藤さんは君が欲しいみたいだけど」

軽く溜め息を吐いたあと、見下すような視線を冴に送る。


「…断ってくれた方がこちらとしては正直有難い」

「…」

斎藤の言葉に冴は少し俯き、口を軽く結んだ。


暫くの間、沈黙が続く。


沈黙を破ったのは沖田だった。


「まぁ、まだ時間はあるよ。遅くなっちゃたし、湯でも取ろうか」

「…うん。じゃあ準備してくる」

短く息を吐いて、冴は立ち上がる。




「一君はあのコ、どっちに転がると思う?」

冴のいなくなった部屋で沖田は斎藤に問いかける。


「…さあな」

「僕は入ると思うよ?」

口元に笑みを浮かべて斎藤を見やる。


「…」


斎藤は静かに目を閉じた。