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いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。
かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。
動乱の時が流れる中、京の町も冬が支配しようとしていた。
鳥羽・伏見の戦いが切って落とされる20日前。
「歳三さんっ!」
部屋に入るなり土方の胸に飛び込んだ綺月。
「おいおい、落ち着かねぇか」
綺月を抱き締めながら笑いを含めて応える。
「でも、かれこれ一月はお会いしてません」
「すまねぇな」
首を横に振りながら土方の胸に顔を寄せる綺月。
「綺月、顔を見せてくれ」
土方を見上げる綺月。
「…お会いしとうございました」
「ああ、俺も会いたかった」
もう一度堅く抱き締める。
「…淋しい思いをさせたな」
「…淋しくないと言えば嘘になります。
でも心のこもった文や句をありがとうございました」
「それくらいしかしてやれることがなかった」
溜め息まじりに言葉を吐く。
「いいえ、充分嬉しかったです」
土方の優しい眼差しに応えるようにふわりと笑う。
「月が見たいな」
土方はぽつりと呟いた。
「寒さは平気ですか?」
「じゃあ少しの時間だけだ。お前に風邪をひかれちゃ困るからな」
目を細める土方。
「…綺麗」
戸を開けた綺月は言葉を溢す。
土方の下へ歩み寄り、静かに座り寄り添う。
「冬の月は凛としていて心に染み渡ります」
「ああ、そうだな」
暫し、月を見上げる二人。
「綺月」
「はい」
「お前にこれをやろう」
袂から簪を取り出す。
シャラ…と言う音を携え、
月の光が反射してより一層青白い輝きを増す。
「綺麗…」
うっとりと簪を見つめる。
「…宜しいのですか?」
「当たり前だ」
口元に笑みを浮かべた。
「嬉しい…」
綺月は自分の挿していた簪を取る。
「…挿していただけますか?」
「ああ」
スッと綺月の髪に簪を挿していく。
「…綺麗だ。よく似合っている」
「ありがとうございます」
綺月の頬を指でなぞり、唇に口付けを落とした。
互いの唇をゆっくりと啄んでいく。
綺月を慈しむかのように顔にいくつも口付けを落としていく。
「…戸を閉めるか」
「そうですね」
くすりと笑う綺月。
「綺月」
名を呼び、綺月を見据える。
「はい」
「もうすぐでかい戦が始まる」
力強くしなやかな声が部屋に広がる。
「…はい」
ゆっくりと目を伏せる。
「何が起こるかわかんねぇ状況だ」
「…」
静かに息を飲んだ。
「離れても淋しくないように俺の全部をお前に注ぎ込んでやる」
「…」
目をそっと開けて土方を見つめる。
「受け止めてくれるか?」
「…はい、勿論です」
眉根を寄せつつ、口元に笑みを浮かべた。
「…大丈夫だ。そんな顔するな。簡単に死ぬ気はねぇ。生き延びて迎えにきてやる」
綺月を強く抱き寄せ、口角を上げる。
「…はい」
ふわりと笑う綺月。
「歳三さん?」
「何だ」
「私の全部も受け止めて頂けますか?」
綺月の瞳に憂いが浮かんだことを土方は見逃さなかった。
「ああ」
綺月の瞼に口付けを落とす。
初めて綺月を抱いた時のように
土方は髪から足の先まで口づけを落とし、舌を這わせていく。
「離れたってお前はずっと俺のもんだ。わかってるな?」
「何を今更…」
「身心全て貴方だけの物と何度も申し上げましたよ?」
土方にふわりと笑いかける。
「愛してる、綺月」
「私も愛しています」
土方は覚悟を持って綺月を抱いた。
綺月を貪り、自分を注ぎ込む。
綺月が土方を忘れる瞬間がないように。
寧ろ綺月を壊してしまいたかった。
綺月を抱く最後の男でありたかった。
綺月も土方を求め続けた。
身も心も忘れられないくらい傷付けて欲しかった。
寧ろ土方の手で壊れてしまいたかった。
綺月を抱く最後の男が土方でありたかった。
行為を終えてからも二人は繋がったまま、
飽きることなく抱き合い、互いに口づけを啄んでいた。
「時間だな…」
「…はい」
引き抜いた土方の自身を綺月は丁寧に舐めあげた。
身支度を整えた二人。
土方が戸を開ける。
スッと入ってくる冷たい風が二人の頬を撫でる。
傾いた月が二人を見つめていた。
窓辺に腰掛ける土方。
寄り添う綺月。
「歳三さん?」
「何だ?」
「お忙しいのは十二分に承知なのですが、
月を見かけたら刹那で構いません。
見上げて頂けますか?」
土方を見上げる綺月。
「…お前が天女のように舞い降りてきてくれるのか?」
口角を上げる。
「…意地悪な人」
土方の首元に擦り寄る。
そっと抱き寄せる土方。
「歳三さん?宜しければこれを…」
「長年使ってきた帯留めです。こんなもので申し訳ないのですが…。
貴方のお傍にいさせて下さい」
土方の掌に乗る桜色の帯止め。
そっと握り締める。
「綺月、お前も月を見上げろ。
…いつでも抱き締めてやる」
「…はい」
ふわりと笑う綺月。
揺れた簪がきらりと光った。
ゆっくりと互いの唇を啄む。
「…綺月、生きろよ。俺を待っていろ」
「…はい。ご武運を…お祈りしております」
口元に笑みは浮かべるも、流れる一筋の涙。
土方はそれを唇で掬う。
「…見送りはいい。行ってくる」
「…はい。お気をつけて…。いってらっしゃいませ」
土方は振り向きもせず、後ろ手で襖を閉める。
綺月は俯き、部屋に佇む。
「もう…今すぐにでも会いたいと思ってしまうのは、
私の我が儘なのでしょうか…」
呟いた綺月は月を見上げた。
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明日からはお話が極端に短い回もあります。
ご了承下さい。
みふゆ