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第1話はこちら→★
いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。
かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。
廊下を歩く綺月。
後ろから声をかけたのは揚羽だった。
「綺月、あんたこの部屋だってさ」
「…私は女将から別の部屋って言われてるけど」
「今さっき女将に伝えておいてって言われたのよ」
「…随分と親切なのね。じゃあこの部屋ね?」
溜め息混じりに言葉を吐く。
「大人しく言うこと聞いてりゃいいのよ」
苛立ちを含めた声。
「はいはい」
あしらうように返事する。
「お互い楽しみましょうね」
揚羽は鼻歌を歌うかのような表情をし、手をひらひらと振った。
その後ろ姿を目を細めて見た。
戸を開けて名乗り顔を上げる。
「綺月…」
そこには綺月を見て眉を上げた原田がいた。
「原田様…」
『…謀られた』
綺月は揚羽を思い出し、奥歯を噛んだ。
揚羽が向かった先にはこの日に来ると言っていた土方がいるはず。
「すみません、お部屋を間違えたようですね」
「ああ、そうみたいだな」
「では…」
「綺月」
襖を閉めようとする綺月を呼び止める。
「部屋行く前に一杯相手してくれよ」
「…はい」
原田の隣に座わり酌をする。
「…まさかお前とこうして二人になれるとは思わなかったぜ」
「そうですね」
「じっくり見るとやっぱりお前は別格だな。…存在がそそられる」
顔を覗き込む原田。
「…お待ちになってる方がいるので行きますね?」
軽く口元に笑みを浮かべ立ち上がる。
「待たせてるのはあの人か?」
「…さあ、どうでしょう」
「きゃっ!」
いきなり手をグッとひかれ、態勢を崩す。抱き留める原田。
「今日お前を呼んだのは俺だ。そういうことにしとけよ」
「…そんな」
眉間に皺を寄せる。
「あの人に気ぃ遣ってお前と二人きりになるのは避けてたが…、こういう状況なら話は別だ」
「…」
「俺は据え膳は食っちまう主義でな」
「今の私は据え膳のつもりはありません」
原田の口角が上がる様を綺月は見た。
別室。
入ってきた揚羽をちらりと横目で見る。
「部屋を間違えちゃいねぇか」
土方が言葉を吐いた。
「いいえ」
口元に笑みを浮かべる揚羽。
「…綺月を呼んだはずだ」
揚羽には目を合わさず、目を伏せていた。
「あら、私と聞きましたが」
袖で笑う口を隠す。
「…」
「たまには綺月以外の女も味わってみてはいかがです?私も綺月には負けま…」
「帰る」
スッと立ち上がる土方。
「あら、酷い方」
揚羽は目を細める。
「…土方様を置いて綺月は誰の相手をしているのでしょうねぇ」
「ああ、もしかして同じ新撰組の方とか?」
クスクスと笑う揚羽。
「おい、お前。その煩い口を閉じろ。女だからって容赦しねぇぞ」
横目で揚羽を睨み付ける。
「あら、怖い。流石、鬼の副長様ですね?」
ピシャンと閉められた襖に向け、揚羽は声を上げて笑った。
綺月を抱き寄せ、首筋に口付けを落とす原田。
「なぁ、綺月。あの時はお前も応えてくれたじゃねーか」
「あの時は…」
あの時はまだ土方を綺月がほのかに想いを寄せていただけ。
今は違う。
土方と互いに想いあっていると知った。
遊女ということを互いに弁えてはいるものの、
やはり自分の女が他の男に抱かれる気分は居たたまれないだろうと綺月は思う。
ましてやその相手が同じ新撰組の男なら
土方の心中は穏やかなものではないのは容易に考えられること。
「原田様も私を抱けばお立場が…」
「構わねぇ」
原田の舌が首筋を這う。
「でも…っ!」
「おい、綺月。…お前、遊女じゃねぇのか」
苛立ちを含めた低い声。
「…」
「客を断らねぇのがこの家の慣わしだろ?」
「…酷い人」
眉間に皺を寄せ、言葉を溢した。
「ああ、わかってる。でもな、お前が欲しいんだ。我慢なんねぇ」
綺月の艶やかな唇に軽く口付けを落とす。
「俺やお前があの人に黙ってりゃバレねぇよ」
「…」
「沈黙は了解の証だよな?」
綺月の唇を啄んでいく。
「…原田様?」
「…何だ」
「私を抱いてしまえば…、貴方は私に嵌まります」
「…言うじゃねぇか、綺月」
口角を上げる。
「忠告、しましたよ?」
綺月の唇を割って原田の舌が口内に入る。
綺月の目から一滴の涙が零れた。
原田の舌に舌を絡ませる。
綺月は遊女の綺月となる。
原田は綺月を貪り続けた。
綺月は原田の欲に応えて、更に昂るように身体と視線で導いていく。
ただ漏れる声や吐息は少ない。
綺月のせめてもの抵抗。
しかし、初めて綺月を抱く原田はそんなことには気づきもせず、
逆にそれがそそられ、綺月の身体を求め続けた。
次第に綺月の身体に溺れていく原田。
次第に身と心を切り離していく綺月。
原田が紡ぐ甘美な言葉も綺月の心には届かない。
捩じ込まれ後ろから突き上げられるも
応えるのは身体だけで、
瞼の裏には土方の姿。
『土方様…』
声を殺して、名を呼んだ。
原田を見送った綺月。
「原田さんは抱いてくれた?」
背後から揚羽の声がかかる。
「ええ、もう十二分に」
睨みつけながら口角を上げる。
「あら。もう次の席についてるの?早いわね」
揚羽の方を向き、目を細める綺月。
「あんたの旦那が私の身体がたまんなくて、早くイっちゃっただけのことよ?
あんな旦那を選ぶなんて信じられない。あんな力任せなだけの男…」
得意げな揚羽の声を制するように言葉を投げる。
「あら、可哀想ね。抱かれもしなかったなんて。
もし抱かれたとしてもそんな酷い抱かれ方をしたのね。ああ、可哀想」
揚羽が綺月を睨みつける。
綺月は口元に手を添え、くすくす笑いながら揚羽の横を通り過ぎた。
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遊女ですから、ね。
綺月ちゃんもこれくらいはかましてくれないとw
みふゆ