「白くまのぬいぐるみ」
僕は、白くまのぬいぐるみ。おもちゃ売り場のぬいぐるみコーナーにいる。クリスマスを迎える季節になって、おもちゃ売り場はにぎわっていた。子供たちが僕をみて、「かわいい。」と言っては、だっこした。僕は、どんな人のもとにいくのだろう。友達のぬいぐるみ達は、次々に買われていなくなっていった。僕は、ドキドキしていた。でも、わくわくもしている。どんな子供と一緒に遊べるのかなと思っていた。クリスマスイブの前の日に、おもちゃ売り場に来たおじさんが、僕を手に取った。そして、僕をレジに持って行った。僕は、クリスマス用の袋に入れられ、リボンをかけられた。僕は、ちょっと残念だった。おじさんの所にいくのかと、残念だった。できれば子供の家に行って、いっぱい遊びたいと思っていたからだ。
クリスマスの日に僕は袋に入れられたままおじさんと家を出た。いったいどこに行くのだろうと思って、不安だった。おじさんは、誰かの家のインターホンを押した。
「メリークリスマス。みよちゃん、クリスマスプレゼントだよ。」
おじさんの声が聞こえた。
「ありがとう。」
女の子の声も聞こえた。もしかして、僕あは、このみよちゃんの所に来たのかなと思った。二歳か、三歳くらいの女の子かな。いっぱい遊んでくれるかな。期待した。みよちゃんは、リボンをほどいて、袋の中から僕をとりだして、言った。
「かわいい。」
僕はみよちゃんを見た。な、なんと、みよちゃんは中学生の女の子だった。こんな大きな女の子が僕と遊んでくれるとは、思えない。きっと僕はみよちゃんの部屋で、いい子に飾られて過ごすんだろうと思った。でも、ちがった。
みよちゃんは僕に「くーちゃん。」と名前をつけて、毎日僕と一緒に遊んでくれた。寝る時は、僕をだっこして、一緒にベッドに入り眠った。みよちゃんは、中学三年生で、受験生なのに、勉強のあいまに僕と遊んでくれた。時々、みよちゃんの悩みを相談された。僕は、ぬいぐるみだからしゃべれない。でも、みよちゃんは、僕に悩みをうちあけると、「うん、そうだよね。くーちゃん、私頑張るね。」と言ってちょっと元気になった。
僕はみよちゃんの一番のぬいぐるみになって、幸せだった。
しかし、三年後、思わぬことが起きた。それは、みよちゃんが、巨大な茶色いくまのぬいぐるみをだっこして帰って来たのだった。どうしたんだ、その巨大な茶色いくま。僕は思った。みよちゃんは、誰かからその巨大な茶色いくまをプレゼントしてもらったようだった。その日から、みよちゃんは、巨大な茶色いくまと一緒に眠るようになった。僕は、くやしくて、さみしかった。あんなに一緒にみよちゃんと遊んだり、眠ったりしたのに。僕は、部屋のすみにおいやられた。悲しかった。
でも、数日後、みよちゃんは巨大な茶色いくまと僕をならべて、遊び出した。巨大な茶色いくまは「マロン」と名前をつけられていた。マロンと僕はみよちゃんと一緒に遊んだ。僕の方がみよちゃんと仲がいいんだぞと、初めは思った。でも、マロンは意外といい子だった。その日から、僕はマロンと友達になった。
みよちゃんは、いつしか大人になった。僕とマロンと一緒に遊ばなくなった。でも、僕はさみしくなかった。友達のマロンが一緒だったから。そのうち、みよちゃんは、結婚した。もう、僕達と遊んでくれないかも。そう思うと、やっぱりちょっとさみしかった。でも、ぬいぐるみの人生はそんなもんだと、僕は思った。人間は大人になる。ぬいぐるみは、年をとらない。大人になったみよちゃんと一緒に遊べなくなったけれど、僕の心にはみよちゃんと過ごした日々がたくさん残った。そして、それがぬいぐるみの人生なんだと思った。
もう、僕はみよちゃんのそばにはいない。でも、空からいつも見守っているからね。大好きなみよちゃん、一緒に遊んでくれてありがとう。僕は、みよちゃんのクリスマスプレゼントになれてうれしかったよ。本当にありがとう。