日本では故人のことを悪く言わないという美徳がある。例外は嫌いな政治家や学者が亡くなったときの左翼活動家の言動くらいのものだ。しかしこれは場合によると美徳ではないこともある。
最近亡くなった芸能人が問題なのだ。大御所とされているお笑い芸人、時代劇、あるいはアクション映画などで活躍した俳優、あるいはやたらきれいで美しい心に染みるヒット曲を歌った歌手。これらの中には生前、セクハラ、性犯罪の加害者であった人が多数いる。
しかし亡くなるとそんなことは話題にせず、素晴らしい人だったという設定になる。どこまで事実か不明だが、泣けるエピソードなどもマスコミを通じて流れる。
亡くなった人を惜しみ、懐かしがるのはいいが、彼らの性犯罪被害者はどう思うだろうか。彼らを称えるテレビ番組や雑誌記事を見るたびに嫌な気持ちになる。いまさらセクハラを訴えても、もう亡くなった人なのだから水に流そうじゃないかと言われる。
ジャニーズ事件は加害者死亡後も追及しているのだから、他の性犯罪も同様にすべきだろう。
昔は時代が違うのだから、性犯罪に対する意識も異なる。だから今の感覚で裁くなという意見もある。確かに戦国時代の出来事を今の法律でどうこう言うのは滑稽だ。しかし昭和後期は刑法も現在と大きく変わらない。飲酒に甘い、喫煙に甘いといったような意識の違いはあるが、昭和時代も飲酒運転は犯罪だったのだ。
故人の犯罪もきちんとこの行為は犯罪でしたと発表し、けじめをつけることによって、以後の社会がまともになるのだ。