2024年現在、ホーチミンで最も賑やかな夜の街として名高いブイビエン通り。
そして、遡ること1998年3月、そこは、まだまだ発展途上のストリートだった。
バックパッカーたちの聖地として知られ、安宿が軒を連ねていた。
背中にリュックサックを背負った西欧人たちが行き交い、その中には戦争孤児やベトナム戦争で枯葉剤の影響を受けて生まれた奇形の大人たちの姿も見受けられた。
土日は特に人々で溢れかえり、戦争孤児たちが多く集まっていた。
彼らは旅行者を見つけるや否や、たばこやガムを売りに駆け寄ってきた。
最初は驚きつつも徐々に彼らとの交流を楽しむようになり、顔見知りの仲間が増えていった。
話しかけてくる孤児たちの無邪気な笑顔に触れることで、旅の疲れも癒されていった。
旅行を計画する旅行者たちは、キムカフェやシンカフェ(Sinh Cafe)といった旅行業者を利用していた。
これらのカフェは、ベトナム各地や隣国へのツアーを申し込む場として人気で、旅行者同士の情報交換の場ともなっていた。
カフェでの雑談は、新たな冒険のヒントを得る貴重な時間だった。
ブイビエン通りの中央には、繁盛している果物のジュース屋があった。
このジュース屋では、1杯30円からの格安価格で新鮮な搾りたてのジュースを楽しむことができた。
特にお気に入りは、マンゴーとアボカドのジュースで、氷なしで注文するのが通な楽しみ方だった。
そのジュースの美味しさは、ブイビエン通りを訪れる旅行者たちの間で評判となり、連日長い行列ができていた。
ブイビエン通りには多くの土産物屋も存在し、ベトナムの菅笠や絵葉書などが売られていた。
これらの土産物は、旅行者たちが帰国後もベトナムの思い出を振り返るための大切な品となっていた。
また、通りのあちこちにはベトナム料理店が点在しており、その豊かな香りが通りを包み込んでいた。
フォーやバインミーといったベトナム料理の名物が味わえるこれらの店は、旅行者にとって欠かせない存在だった。
時代が進むにつれて、ブイビエン通りも変貌を遂げた。
高層ビルや現代的なカフェ、バーが立ち並び、夜になるとネオンが煌めく活気あふれる場所となった。
しかし、昔ながらの雰囲気や人々の温かさは変わらず残り続けている。
西欧からの旅行者たちも引き続き訪れ、その魅力に惹かれている。
現在のブイビエン通りは、過去と現在が交錯するユニークな場所だ。
歴史の足跡を感じながらも、現代的な楽しみ方ができる。昼間は昔ながらの市場を巡り、夜はネオンに照らされたバーで一杯楽しむ。
ブイビエン通りの多様な魅力は、訪れる者すべてを魅了し続けている。
ベトナムの急速な発展を象徴する場所でありながら、どこか懐かしさを感じさせるブイビエン通り。
この場所を訪れると、過去と現在が共存する不思議な感覚に包まれるだろう。
その魅力は、これからも多くの旅行者たちを引き寄せ続けるに違いない。