1998年3月1日
ベトナムのホーチミンに到着した。
ホーチミン国際空港に着いたとき、ずいぶんと古い空港に感じた。
これから入国審査だ。
入国審査の際、入国税のようなものをベトナムのお金であるドンで支払うよう命じられた。
そんなことは聞いていなかったため、ドンに両替していなかった。
円かドルでも構わないかと聞いたが、ドンしか受け付けないという。
仕方がないので、両替所がどこにあるか尋ねると、入国した先にあると言われた。
それでは両替できないじゃないかと無性に腹が立った。
足止めされているのは自分だけだろうか。
このまま入国できないのか、途方にくれていたそのとき、1人の日本人が声を掛けてくれた。
その日本人がドンに両替してくれたのだ。
やはり日本人は優しい。
ようやく、係員にドンを支払い、予定時刻よりも3時間遅れて無事に入国できた。
しかし、次に問題が待っていた。
昨日送ったメールを、現地スタッフが見てくれていて、誰か空港まで迎えに来てくれていることを期待していたが、誰もいない。
出国するまでに3時間も予定を過ぎてしまったので、もう来ないものと思われ帰ってしまったのか、それとも初めから迎えに来ていなかったのか。
既に今日からの宿泊代を前払いしているので、何としてもホテルに着かなければならない。
しかし、どこに宿泊するのか、何の情報もない。
分かっているのは、ホーチミン市総合大学で明日から授業が始まるということだけだ。
とりあえず国際電話で日本の現地スタッフに連絡を取らないといけない。
公衆電話を見つけたが、あいにく電話を掛けるための硬貨を持っていなかった。
貨幣に交換してもらえるよう両替所を探したが見つからない。
いろんな人に声をかけたが、全く英語が通じない。
小さな店を見つけ、小銭に両替してくれと頼んだが、全く話が通じない。
どうなっているんだ、ベトナムは。
『地球の歩き方』を見て、ようやく自分の認識不足に気づいた。
ベトナムでは硬貨がそもそもなく、公衆電話から電話が掛けられなかったのだ。
自らの固定概念が、完全に崩された。
無性に日本に帰りたくなった。