今日の建物は上野・東京国立博物館の「表慶館」です。

年に一、二回の特別展示開催の時のみ中に入れて、しかも建物内部(展示物を除く)の撮影が珍しく可という情報を得て、早速訪問しました。

11月15日まで「工藝2020 -自然と美のかたち-」展が開催されています。

 

博物館の正門を入ると左に美しい姿が見える。
 
「表慶館」は迎賓館・赤坂離宮を設計したコンドルの直弟子の片山東熊の手により、1908年・明治41年竣工、翌年に開館した。当時皇太子であった大正天皇のご成婚祝いに市民の寄付金により奉献された美術館で国重要文化財。
「赤坂離宮」は皇太子ご夫妻の新居で1909年・明治42年に竣工した、こちらは国宝である。これらは同じ片山東熊(とうくま)の設計により、ほぼ同時進行で建てられた兄弟ともいうべき貴重な明治末期の建築である。
 
病弱でネガティブなイメージがある大正天皇ですが、ご成婚の前後は非常にお元気で全国の行啓旅行を度々なされていて、当時は陽気で快活な皇太子として、国民の人気も高く期待も大きかったのでした。
 
入り口は阿吽の獅子が守っている、ネオ・バロック様式。
 
中に入ると豪華で美しい中央エントランスホールに圧倒される。
 
は7色の大理石でモザイク画が描かれている。
 
見上げると、手の込んだ天井の飾り。
 
二階の回廊に上がってみると・・・、列柱が美しい。
 
下をみると・・・。
 
上をみると・・・。
 
ドームの装飾は浮彫に見えるが、拡大すると装飾画に巧みに陰影をつけてレリーフに見せているのが判る。
使われている意匠は赤坂離宮のものと良く似ている。
 
さらに見逃せないのが南北端にあるレトロな階段。すばらしく優美なデザインで、東熊の宮廷建築家としてのセンスの良さに脱帽!
 
アール・ヌーヴォーの階段、このエレガントな美しさは美術館のものとは思えない。
 
 
階段の昇り口
 
階段室のドーム。中央ドームとは違って装飾は少なくスッキリしている。
 
外にでて見ましょう。外壁の装飾も赤坂離宮と良く似ている。こちらは「芸術」をモチーフにしたもののみで、赤坂離宮にある「軍事」に関するものはなさそうだ。
 
南側の階段室とドーム屋根。
 
法隆寺宝物館の前から。普段とちょっと違う見え方が楽しめます。
 
これは博物館入り口から本館へ向かう途中のいつもの風景。本館には入るけど表慶館の中を見学しようという方は意外と少ないようです。
 
表慶館は現在、特別展示(本館通常展示とは別途有料)がある時しか入場できなくなっています。1999年の平成館開館までは日本の考古学資料が展示されていて、国宝の金印や縄文土器、埴輪などを見た覚えがあります。もちろん常設展示に含まれていて無料でした。当時は建物にはほとんど興味はなく、内部がどのようになっていたか残念ながら記憶が定かではありません。
 
2005年・平成17年に大がかりな耐震・修復工事がなされリニューアルされたのですが、特別展示にしか使用されなくなったようです。建物もすばらしいので是非、撮影可能な一般公開日を設けて欲しいですね。
 
本館は銀座・和光ビルなどを設計した渡辺仁による1937年・昭和12年竣工のいかめしい帝冠様式で、建物としては表慶館の方がずっといいと思うのですが、一般人になじみがないのが残念です。
 
フォクトレンダー UWH 12mm/F5.6(一部はFE1635Z)+A7