政府は旧菅政権時の「温室効果ガス46%」削減方針を受けてエネルギー基本計画の見直しを閣議決定しました。しかしこれは由々しき問題を含んだリスクの高い計画だと思います。

 

新エネルギー基本計画電源構成(2030年度)

1. 再生可能エネルギー 36~38%(太陽光15%、風力5%、水力10%、地熱1%・・)

2. 原子力発電        20~24%

3. 火力              41% (石炭19%、LNG 20%、石油2%)

 

尚、現在のエネルギーミックスは以下となっていて、水力を除く再エネは現状10%ほどです。

日本の電気というのは、下図のように1日あたり或いは季節で変動しています。

 

電力は基本的に貯蔵ができないので、常時発電力を調整しながら使わなければならないのです。実際にどうやって調整しているかというと下図になります。但し現状は原子力発電がほとんど稼働していないので、石炭火力がベースロードを務めていますが。

 

この図の真ん中に太陽光・風力発電が描かれていますが、この電源は天気任せで変動多い上に、このようなきれいなカーブではなく、増えたり減ったりを繰り返し、ゼロになる時もあります。従って必ずバックアップ電源が必要になります。もし再エネが3千万KWあるのであれば、同じだけバックアップが必要です。つまり二重に電源を持たなければいけないのです。

太陽光の設備利用率はわずか13%、風力も20%ほどであってなおかつ故障等によりさらに下がり、風力では設備停止30%以上のところもあります。それを補うバックアップ電源は常に待機していて、すぐに立ち上がるものでなければなりません。

それは現状石油またはLNG火力発電です。

上の設備構成から行けば、火力は構成能力41%に加えて再エネ分の36%分もバックアップとして持たなければなりません。つまり電力会社は二重投資となるのです。

現状は老朽化した火力発電が残っているのでバックアップはできていますが、それでも経

産省が今冬の電力余裕率が3%程度になる可能性に言及したように、現状でもきつきつの状態で、設備故障でも発生すればブラックアウトの可能性すらあります。

 

これらの老朽火力は今後フェードアウトしていくのですが、電力会社が単にバックアップのために余分な設備投資をするとは思えません。すでに電力小売は自由化されていて以前のような地域10電力会社への締め付けはできないでしょう。

 

原因は不安定な電源である太陽光や風力発電の割合が増えることにあります。現在の発電比率10%程度でもこの有様です。今後この比率が30%を超えるような状況になれば一体何が起こるのでしょうか?

経産省がまとめた今回のエネルギー基本計画は、供給責任の放棄に繋がるものに他なりません。一度ひどい目に合わせて思い知らせようと考えているのかも。

 

今回の選挙で”脱原発”なんて簡単に言っているけれど、実現できるのでしょうか。