お正月明けの1月5日、自宅に帰る。
Yくんとちゃんと話そう、と気持ちを固めて。
Yくんに帰ることは伝えていたけど、
予定よりも早く自宅の近くまで戻ってこれた。
駅に着いて、家までの坂を上る。
玄関の前で深呼吸をする。
まずは笑顔で”ただいま”って言うんだ。
ドアを開けようとした瞬間、中から話し声が聞こえた。
手が止まり、無意識に聞き耳を立てていた。
彼しかいないはずなのに…なんだろう。
話し声が近づいてくる。私は咄嗟に階段の影に隠れた。
ドアが開いて、中から出てきたのは彼と女の子。
どこかで見たことがある。そうだ、彼の中学の同級生だ。
学生時代の遊び仲間だったと、紹介されたことがある。
あの子、なんで…。
彼はじゃあね、と彼女に手を振る。
「奥さんにバレんなよ笑」彼女が笑いながら言う。
何…どういうこと。
彼女が見えなくなると、部屋に入る彼。
あとを追うようにして私も部屋に入った。
「えっ!あっ!おかえり、わたあめちゃん、
ずいぶん早かったね!!」明らかに挙動不審だ。
「ねぇ…今の女の子、、、なんで?」
「え、わたあめちゃん見」
「何してたの。」彼の言葉に被せるように言った。
状況を把握した彼は気まずそうに床に座る。
長い沈黙のあと、"…ごめん"と彼。
「そういうことなの?浮気したの?」
頷く彼を見て、自分の中の糸が切れた。
「…え、この状況で?ありえなくない?
なんでこの部屋にいれたの?ねぇ?
私たち結婚してるんだよ?親になるんだよ?
え、ていうかこの布団で…したわけ?」
彼の返事なんか聞きたくないというように
私の口は止まらない。涙が出てくる。
「Yくんと私がいつも一緒に寝ていた布団で…?
私…たちの、場所だよね…?なのに…なんで…」
"ごめん"、それだけを繰り返す彼。
「わ…たし、Yくんと向き合おうと思っ、て、
幸せに、なりたくて、帰ってきたんだよ」
涙が溢れて上手く喋れない。
「ごめん、一人で辛くて寂しくて、A子に
話聞いてもらってたらそうなっちゃって…」
彼の目には涙が溜まっていた。
なんで?なんであなたが泣くの?
その涙は私を傷つけてしまったことへの涙?
それとも、責められてる自分への涙?
彼の言葉を聞いて、その涙を見て、
自分の中でスーッと熱が引いていくのが分かった。
"もう終わりだ、この人は自分が一番大事なんだ"
妊娠中の浮気なんてよくあること、と
言われるかもしれない。
でもそれだけじゃない。
Yくんは私をたくさん裏切った。
夫婦になったんだから、子どもがいるんだから、
再出発出来るよう努力しなければ、とか
浮気された原因は妻にもある、とか
そんな声が聞こえてきそうだけど。
もう私には全てが限界だった。
"Yくん、私たちもう無理だよ"
私は部屋を出て、近くの公園のベンチに座った。