Yくんは、キャバクラのボーイをしていた。


呼び込みで外に出てるときに

顔見知りが紹介してきたのが彼だった。


小柄で、私と身長はあまり変わらない。

一見冷たそうな顔をしているが

笑うとすごく優しい顔になる。


何回か顔をあわせるうちに、

私は彼の笑顔に心惹かれていった。


呼び込みで外に出ると、自然と彼の姿を探す。

そして目があうと、笑って手を振ってくれる。


彼も私の事を好きになってくれたようで、

連絡先を交換して付き合い始めるまで

そんなに時間はかからなかった。


彼は父子家庭で姉と3人暮らし。

お母さんは弟と2人暮らしをしていて

真ん中っ子の彼は放置されて育ったそう。


それでも、彼はすごく優しくて

愛情表現もちゃんとしてくれる。

私は満たされた気持ちで毎日幸せだった。


「愛される」とはこういうことなんだと。

彼に出会って、"生きてて良かった"と

初めて思うことが出来たんだ。


そして付き合って半年ほど経ったある日のこと。


バイトから帰宅し仮眠をとっていた時、

別室で同じように寝ていた母に一本の電話が入った。


5分程して、母が私の部屋に来た。

携帯を握りしめたままの母の手が震えてる気がした。


「ママ?どしたの?」欠伸をしながら問いかける。

「わたあめ、落ち着いてね」

「何が笑。落ち着いてるよ」横になったまま返事をした。


「あのね……」母が泣き出す。

私はびっくりして慌てて起き上がる。

「えっ何なに!どうしたの??」


「あのね、お婆ちゃんから電話があって。

…パパが、亡くなったって…」

「え…?嘘でしょ…?え、え、なんで、」


あまりの突然の訃報、何かの冗談だと思った。


だけど、目の前の母が泣いている姿を見れば

一目瞭然、それは冗談ではなく真実で。


本当…なんだ…。涙が溢れてくる。

死因は、お酒の飲み過ぎで肝臓がやられたそう。


元々酒好きな父だったが、離婚で色々失い、

仕事のストレスや1人暮らしの寂しさから

お酒の量が増え、過剰摂取の日々が続いてたらしい。


実はこの数ヵ月前、私は父と喧嘩をした。

その喧嘩をキッカケに一切会っていなかった。


喧嘩をしたまま、父はこの世を去ってしまった。

ごめんねも、ありがとうも言えぬまま。


姉にも連絡し、数日バタバタとした日が続いた。

父の火葬の瞬間の気持ちは今も鮮明に思い出す。


こんなにあっけなく骨になってしまうんだ。

可哀想、熱いよね、パパ…


父の姿形が亡くなって、ただの骨になって。

仲直り、したかった…ごめんね、パパ。