お兄さんと別れてから数日。

ひかちゃんからは連絡が来ない。

どうしたんだろうか?何かあったのか。


家に居ると、息が詰まるような日々。


母の視線を背中に感じていると、母が口を開く。

「あんた最近夜出掛けてるよね?」

「…」

「聞いてんの?あんたまだ小学生でしょ!」

「別に関係な…」言い終わる前に、母は私の腕を掴む。


腕を掴まれた勢いで隠してたリスカの傷跡が見えた。


「…あんた何これ?気持ち悪い」

「頭おかしいんじゃないの」


"…っ!"恥ずかしいような惨めなような気持ちで

母の手を振り払い、部屋に逃げ込んだ。


はぁ、はぁ、呼吸が荒くなる。苦しい。

自分の手で口を覆い、ベッドに横になった。


少しずつ、呼吸が落ち着いてきて

それと同時に涙が溢れ落ちてきた。


…抱き締められたい。

あの日のお兄さんがしてくれたように。


大丈夫だよって、頑張ってる、って

誰かに抱き締めてほしい。


本当は、本当はママが良かった。

ママがぎゅってしてくれたら…

もう頑張らなくていいよ、って

生きてるだけでいいんだよって

そう言ってくれたら。


きっとこんな苦しみも痛みも

一瞬で全部消えてなくなってくれる。


子どもにとって母親とは、それだけ

大きな存在なんじゃないかと思う。


誰もいない、誰も分かってくれない。

私、まだ11歳だよ。

なんでこんな思いばかりしなきゃいけないの?

私は普通になれないの?


ママ、優しかったのに…どうして?

私は生まれてこなきゃよかったの?

生きるのが怖い、辛い。

だけど死ぬのも怖い。

死にたいけど、死にたくない。


本当は"皆と同じように楽しく生きたい"。

でも"私は普通じゃないから死にたい"だった。


生きる勇気も死ぬ勇気もなくて、

皆と同じように小学校生活もまともに送れなくて

早く私なんか消えればいいのに、なんて気持ちと、

誰か助けてよ、誰か…、なんて、


11歳の頭では到底この感情の整理なんて出来ない。 


誰かにすがりたい。誰でもいいから…

そんな気持ちから携帯を握った。

その手は少し震えていた。


募集サイトを開き、誰か会える人、と投稿した。

誰でも良かった。

そう、ただ抱き締めてほしかっただけ


今にもバラバラに崩れそうな自分を、

誰かに支えてほしかっただけなんだ。