今年度に入ってからの大東文化大学の男子長距離陣の活躍は素晴らしいものがあります。昨年のチームとは全くの別物といえます。

 

圧巻だったのは箱根駅伝の予選会です。早稲田大学、明治大学、日本体育大学などの古豪を破ってのトップ通過を果たしました。昨年の予選会は16位という結果ですが、これだけジャンプアップして予選を通過したチームは過去にないのではでしょうか。

 

 

 

 

この記事にあるように、今年の3月18日に大学OBである真名子圭(まなこきよし)さんが監督に就任しています。その日の夜にミーティングを行い、強化方針、ビジョンを全部伝えたということです。

 

この時の選手たちは完全なマイナス思考に陥っていたとようです。真名子監督はマイナスなことを口にするのはやめて、プラスなことを口にしようと伝えたということです。

 

ただ、練習の内容は大きくは変わっていないように思います。目標の大会を決めて、その大会にピークを持ってくるよう練習を組み立てたようです。また、トラックのレースに積極的に出場して、スピードの強化に取り組んでいます。ここで、多くの選手が自己新記録を達成し、自信につながったといえます。

 

夏まではスピードの強化を中心にして、以降は距離の走り込みへと移行し、20キロを走るための土台作りを行っています。距離を踏むことが目標となりますが、休息は必ず入れ、1日強い練習をしたら2~3日は強度を落とし、また強度を上げるメリハリのあるパターンになります。

 

この練習方法は市民ランナーにも参考になります。毎日同じ距離を同じペースで走る方が多いのではないかと思います。この走り方では心身とも刺激が少なく、ある程度のレベルに達すると記録が伸び悩むことが考えられます。ペースを変えて走ることが、記録向上のカギになるといえると思います。

 

この間はレースにも出場はせずに走り込みに徹したようです。スピードは短期間でつけられるという発想が元になりますが、この走り込みが箱根駅伝予選会での快走につながったのではないかと思います。

 

今年度の大東文化大学の活躍の理由としては、もちろん選手たちの走力がアップしたということはいえます。ただそれだけではない気がします。単純にレースで自身の実力を発揮することができるようになったことだと思います。先ほどのピーキングの話になりますが、真名子監督の指導により、目標のレースに向けての練習の組立ができるようになったと理解しています。

 

真名子監督は選手時代、箱根駅伝に4年連続出場しています。主将を務めた4年生の時には10区で区間賞を獲得しています。大学での本格的な指導は今回が初めてですが、箱根駅伝のことは自身の経験としてよくわかっていると思います。

 

大学卒業後は実業団のホンダに進み、ニューイヤー駅伝にも出場しています。2006年にホンダを辞めて教職免許取得のため大東大文化大学に再入学し、在学中の2年間は陸上部のコーチも務めています。卒業後は三重県の公立高校に勤務し、2012年に仙台育英高校の長距離男子の監督に就任、2019年に全国優勝を果たします。中央大学の吉居大和、吉居駿恭選手は仙台育英高時代の教え子になります。

 

以前は自宅近くでも大東文化大学の選手を見かけることがありましたが、最近は目にすることはありません。全日本大学駅伝の特別協賛会社である長谷工のインタビュー記事にはこのように書かれていました。

 

『森田トレーニングや埼玉県東松山市の物見山を使った起伏のあるコースを取り入れて練習しています。』

 

森田トレーニングはトレーナーでもあり、地元に近い坂戸市の 『もりた治療院』 を経営されている森田篤史さんの考案したものだと思われます。ただ、どのような内容なのかは全くわかりません。

 

 

 

物見山は大東文化大学のすぐ近くにあり、サイクリストにはよく知られています。自身も以前はよく練習をした場所です。OBの方の情報になりますが、独自のクロスカントリーコースが設定されているようです。

 

 

 

大東文化大学も物見山に上る急坂の途中にあり、周辺も起伏にとんだ地形で練習環境には非常に恵まれているといえます。かつては山のスペシャリストを多数輩出していますが、この環境を生かした結果ではないかと思います。

 

11月6日に開催された全日本大学駅伝では、1区こそトップで通過したものの12位に終わっています。箱根予選会にピークを合わせたため、調整が難しかったのではないかと思います。

 

箱根駅伝の走りが注目されますが、経験者が残っていないことが心配材料になります。唯一の経験者であるはずの片根洋平選手が今年の4月に退部しているようです。昨年の箱根駅伝予選会ではチーム2位で走っていただけに残念な気がします。

 

箱根駅伝は私自身も付き添いとして経験していますが独特の雰囲気があります。チームとしての経験の有無は、成績に大きく影響することは間違いありません。

 

真名子圭監督の手腕に注目したいと思います。