先回は、相続税が課税されない相続でも、
遺産を相続した方、
つまり子どもが困ることもある。
そこで、相続する方の親が、
準備して旅立つことが大切だ。
といったことを検証しました。
今回は、さらに、
相続税が課税されなくても厄介な相続を
検証するため、
具体的に、相続税は課税されなく、
また、「争族」も起きないように準備した
相続でも、
相続してもらった子どもの家計に、
影響が生じる場合を、
実家を相続した時を例に考えてみます。
この記事の構成は次のとおりです。
--------------------------------
実家を相続するとお金がかかる
--------------------------------
相続する遺産が実家のみで、
その相続資産額が、
相続税が課税されない基礎控除額内でも、
具体的には、
3,000万円+(600万円×法定相続人数)
の計算式で計算して、
たとえば、ひとりっ子が相続するなら、
3,000万円+(600万円×1)=3,600万円
きょうだいが2人なら、
3,000万円+(600万円×2)=4,200万円
といった基礎控除額内で、相続しても、
・所有している期間
・売却するとき
に、費用が発生することがあります。
順番にみていきましょう。
---------------
相続するとき
---------------
実家の土地建物(不動産)を相続するときは、
親の名義を引き継いだ子どもの名義に変更する、
「相続登記」が必要です。
相続登記をするときは法務局登記所に、
「登録免許税」を納税します。
相続登記の登録免許税率は、
実家(不動産)の固定資産税評価額の0.4%です。
たとえば、固定資産税評価額3,000万円を
相続登記する場合の登録免許税は、
3,000万円×0.4%=12万円です。
固定資産税評価額は、
市町村(東京23区を含む)が管理している
固定資産税課税台帳で、
また、毎年、市町村(東京23区を含む)から
通知される、固定資産税課税明細書で、
知ることができます。
この登記手続きを司法書士に依頼すれば、
その分の費用も必要になります。
相続登記は、
令和6年4月1日からは義務化されます。
詳しくは、「法務省民事局のパンフレット」
https://www.moj.go.jp/content/001382091.pdf
をご覧ください。
なお、不動産を登記するときには、
登録免許税のほかに、
都道府県税である「不動産取得税」の
納付も必要です。
しかし、相続をする時は非課税です。
その他、相続遺産が実家だけで、
複数のきょうだいが
均等に遺産を分ける方法として、
「換価分割」といって、
実家を売却して、その収益を均等に分ける
方法があります。
この記事の後述「売却するとき」も
参考にしてください。
また、「代償分割」といって、
たとえば、実家を長男が相続したとき、
遺産額が均等になるように、
長男は、ほかのきょうだいに、
現金を支払う方法です。
特に「代償分割」になる場合は、
親(被相続人)が、子どもたちに、
「争族」にならないように、
積極的に、調整しておくことが大切です。
------------------
所有している期間
------------------
実家を所有している期間は、
この期間とは、相続した人が、
その実家に住む住まないは問わず、
その実家を所有しているあいだのことです。
毎年1月1日時点の不動産所有者には、
市町村(東京23区を含む)から、
固定資産税が課税されます。
その不動産が、都市計画施行地内であれば、
都市計画税も課税されます。
課税金額は、相続登記をする前の名義人である、
親(被相続人)に聞けば、
容易に知ることができるでしょう。
また、そのほかの費用として、
戸建て住宅であれば、
外壁や雨漏りなどの修繕費用が必要です。
マンションならば、
毎月の修繕積立金や共益(管理)費、
それに駐車代なども必要です。
なお、相続した実家に、
リフォームしてから住むなら、
その費用も必要です。
住む人がいなく
「空き家」になる場合でも、
上述の費用は必要です。
加えて、防火や防犯、衛生面といった
管理の費用も必要になります。
----------------
----------------
売却をするときに、
売却益(=譲渡所得)が生じた場合には、
譲渡所得として、
所得税、住民税が課税されます。
その計算式は、
譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)
となります。
戸建て住宅の建物を解体して売却した時の
解体費用は、譲渡費用に当たるでしょう。
など、この譲渡所得の計算は複雑なので、
ここで計算方法の説明は省略します。
国税庁のタックスアンサー
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm
「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
といった項目を読んで理解を深めたり、
実際に、売却をするときは、
不動産売買を専門とする不動産業者や
税理士といった専門家に、
まず、相談することをお勧めいたします。
そのほかに、先月(令和5年4月27日)から、
始まった
相続土地国庫帰属制度について(法務省HP)
も参考になるでしょう。
-----------
まとめ
-----------
このようにみてきますと、
いままで、自宅を所有していた人が、
あらたに相続した実家を所有すれば、
その分、家計の負担は増えるでしょう。
しかし、相続した実家を、
賃貸住宅にして貸したり、
ほかの事業を始めれば、
リフォーム代といった
初期費用はかかりますが、
所得を増やすことができるかもしれません。
相続した遺産をどのように生かすかは、
資金面も含めて、
もらってから考えるのではなく、
時間をかけて、
準備しておくことが大切です。
*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*
◆ 今週のポイント
動かすには時間がかかります!
従って、
準備にも時間が必要です!
*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:
◆ 編集後記
*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:*:
親を亡くす悲しみは天命でも、
相続の悲しみは、
自分で変えることができます!
人生の添乗員®からのワンポイントメッセージ改訂版(第539号)
Photo by photo ac
「人生の添乗員」「人生の行程表」は牧野寿和の登録商標です