個人用貸借対照表(バランスシート)とは

まずは、自分の資産がいくらあるのか、出ていくお金がいくらあるのか知る必要があります。知る方法として企業が資産内容を計算する時に作成する「貸借対照表(バランスシート)」を、個人用にアレンジして作成することで、資産の構成と資産の総額、また問題があるかチェックをすることができます。

下の表は、Aさんの個人用の貸借対照表(バランスシート)です。

 

<Aさんの資産貸借対照表(バランスシート)>

単位:万円

<資産>      <負債>
普通預金 80      住宅ローン 3,100
定期預金 150      自動車ローン 50
社内預金 100      教育ローン 0
株式投資 50      クレジットカード未払い
終身保険 180      負債合計(B) 3,150
自宅(土地+家屋) 2,800      <純資産>
自動車 110      (A)-(B) 320
資産合計(A) 3,470       負債・純資産合計
3,470
 

この表を作成する前に、Aさんに資産状況について、「普通預金は80万円、定期預金は150万円、社内預金が100万円で合計330万円。ほかに株式を持っています。ただ、住宅ローンを返済しているので、実際の資産はよくわからない」といった回答から、表を作成しています。

そこで、そんなAさんの資産が、現在いくらなのかを知るために作成する表が、この個人用の資産貸借対照表(バランスシート)です。

この表の左側「資産」とは、Aさんのお金で評価できる持ち物です。また、表の右側「負債」は返さなくてはならないもの、つまり借金です。そして、「資産」から「負債」を引いた額が、表の右下「純資産」となります。

 

「純資産」は、資産で負債をすべて返した時に残るお金であり、家計にどのくらいどの程度余裕があるかの指標とも言えます。純資産がマイナスだと債務超過の状態です。

また、表の左側は現在持っている資産で、右側はその資産を得るためのお金の出所ということもでき、「資産」=「負債」+「純資産」で保有財産のバランスを保っています。

個人の貸借対照表の作り方

では実際に、この表の作成方法をお話ししましょう。

まず資産の欄です。「預金」は、作成日時点の通帳残高を記入します。
「株式投資」の欄には、直近の時価をインターネットなどで調べてみましょう。購入した時の価格ではありません。この表にはありませんが、投資信託を持っている場合は時価を、外貨預金を持っている場合は、記入時点の為替のレートで計算した金額をいれましょう。

「保険」は、掛捨てではく、終身保険、養老保険や個人年金保険といった貯蓄性の保険が対象です。記入する時点で解約した場合に支払われる解約返戻金の金額を記入します。将来、保険金として受け取れる額ではありません。

解約返戻金がいくらかは、各保険会社から送付される契約内容書面を確認したり、カスタマーセンターに問い合わせてみたりして確認してください。

「自宅」や「自動車」も買った時の金額ではなく、記入時点で売った場合の金額、時価を入れます。自宅は近隣の中古のマンションや戸建ての売り出し価格を、自動車は同車種の中古価格をネットなどで調べてみてくだい。厳密に調べるのは難しいですからおおよその金額でかまいません。

次に負債の欄を記入します。住宅ローンや自動車ローンなどは、借入先が発行する「償還予定表」から、その月現在の元本残高を記入しましょう。
また、カードの分割払いやリボ払いもあれば、その残高も記入してください。

個人用貸借対照表(バランスシート)から分かること

Aさんの場合は、資産の合計は3,470万円でも、負債が3,150万円あるため、純資産は320万円です。
一概には言えませんが、貯蓄額が320万円で賃貸住宅に住んでいる借金のない方と、Aさんと純資産額では同じとも言えます。

また、Aさんの場合、自宅の価値よりも住宅ローンの返済額の方が多い状態です。自宅の資産価値は今後ますます下落することが予想され、債務超過に陥る可能性を否定できません。

こうした状態は、住宅ローン返済中は起こり得ることですが、今後収入の減少など想定外のことが起きた場合には、家計支出の見直しや、住宅ローンの返済方法の変更を金融機関に相談するなどして、早急に対策を打つことが必要です。

負債を減らすには、繰り上げ返済も選択肢のひとつです。しかし、繰り上げ返済をすることで預金が減ってしまうと、資産が減ってしまうわけですから、負債の改善にはなりません。

となれば、資産を増やすか支出を減らす、またはその2つを同時に行うことです。資産を増やすには少しでも利息が高いネット銀行などに預金をする、支出を減らすには現在加入中の保険の見直すなどの工夫をしてみましょう。

個人用貸借対照表(バランスシート)は相続の準備にも使える

この個人用貸借対照表(バランスシート)は、文字通り、資産を計算するものですから、相続の準備にも使えます。夫婦間や親子間に資産を渡すと、原則、相続税や贈与税がかかります。

Aさんのケースでいえば相続税の心配はないと思います。
しかし、相続税の心配はないと思っていた方が、この表を作成して、資産に相続税がかかる可能性があることがわかり、子どもの代まで残しても意味のない資産を売却するきっかけとなった例もあります。

また、たとえ相続税はかからない相続であっても、相続人に資産を平等に渡す資料としても活用できます。

一家の総純資産を把握し、時には家計の改善が必要かチェックするためにも、この個人用貸借対照表(バランスシート)を作成してみてはいかがでしょう

 

初出 ARUHIマガジン 2017.3.13

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