<10/7(土) 11:00提供:週プレNEWS>
坂本光司・法政大学大学院教授は、48年にわたって「いい企業」を訪ね続けており、調査・分析をした企業数は現時点で8000社に達している。
そこから坂本教授が得た結論、それは「人を幸せにする」ことこそが企業経営の王道であることだ。
では、坂本教授が考える「いい企業」=「ホワイト企業」とは?
坂本 「業績がよい」とか、「技術力が高い」とかは、実はどうでもよいことだと思います。また「給与が高い」「福利厚生が充実している」「残業が短い」といったことも確かに大切な要素ではありますが、これらの条件を満たしていても、ブラックな企業はたくさんあります。
一番大切なのは、その会社が「人の命と生活」を守っているか否かです。ここで言う「人」とは5つに分かれ、大切にすべき順に、
①社員とその家族 ②取引先の社員 ③顧客 ④地域社会 ⑤株主 となります。
―なぜこの順番なのですか? 普通は「顧客第一主義」がどの企業でも基本スタンスだと思うのですが。
坂本 簡単です。会社に大切にされない社員は、顧客に心からのサービス提供などできません。大切にされてこそ、いい仕事をしようと思うものです。そして、取引先企業の社員は“社外社員”と考えなければならない。多くの大企業は、取引先にコストダウンを押しつけていますが、その社員と家族の生活を軽視しているんです。……
―“顧客第一主義”で経営が傾いた企業はあるんですか?
坂本 もちろん。例えばある宅配業者は、2時間ごとの配達時間帯を細かく設定したり、夜中でも再配達に応じたりするなど、多数の荷物を引き受けるうちに社員が疲弊し、結果的に遅配や配送ミスなどサービスの質の低下につながりました。
本当の優良企業は社員に決して無理をさせません。長野県の「伊那食品工業」という寒天メーカーは、注文が殺到したときは、「社員に残業させられないので」とその注文を断ります。それにもかかわらず、同社は一貫して黒字経営を続けているんです。
「伊那食品工業」で注目すべき点はほかにもあります。同社は、地域住民のために公道に歩道橋を設置したり、工場の敷地からくみ上げる井戸水を地域住民に無料提供しているんです。同社の経営理念は「社員の幸せを通して社会貢献する」ですが、まさにそれを実践しています。
―とはいえ、会社の財政基盤をつくる「株主」が、優先順位の一番最後っていうのは、やっぱり違うのでは?
坂本 いいえ。①~④の順番を守るから業績が上がり、その結果として⑤株主に配当がつくんです。事実、私が見てきた8000社の中で、この“ルール”を守った企業の倒産事例はひとつもありません。むしろ、毎年黒字経営を続けていますよ。
私はそういう企業を毎年表彰する「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の審査委員長を務めていますが、大賞を受賞する会社は最低でも次の5つの条件をクリアしなければなりません。
それは、過去5年間で、「リストラゼロ」「黒字経営」「取引先を差別しない」「労災事故ゼロ」「障害者の法定雇用率の遵守」です。これに加え、「残業時間の短さ」や「ノルマがない」ことなども審査項目のプラス材料としています。
―「残業時間が短い」「ノルマがない」に魅力を感じるサラリーマンは多いと思います。ただ、そういう会社って社員が甘えてダラダラしがちというか、業績を伸ばせない会社というイメージがあるんですよね。
坂本 そんなことはありません。ノルマなしでも、社員がモチベーションを保ち、業績を伸ばす会社はたくさんある。
例えば、家電量販店の「ケーズデンキ」(茨城県)は、業界1位になれば会社は廃れるからと「がんばらない経営」をモットーにしています。ここは「社員第一主義」に根差し、社員の生活を守るため残業がなく、ノルマも課しません。だから社員は利益率のいい商品を売ろうと躍起にならず、客の欲しいものを丁寧に説明する営業に徹する。これが客の信用を生み、堅実な売り上げにつながっているのです。 ……
新入社員の2年継続率10数%の生保の法人営業時代の私。
正直に言って、ノルマ達成が厳しくなると、自分の営業成績がよくなるような保険設計をしたという黒歴史があります。
電話営業の派遣社員時代の私。
ノルマを達成してほっとしたのも束の間、翌月のノルマがアップ。
ここでまたノルマを達成すると、どんどん大変になると思い、この契約は来月に回そうなどと、姑息な調整をしたことがあります。
ノルマがあるが故のゆゆしき事態は、ノルマがなければ避けられたこと。
電通の違法残業事件に有罪判決が言い渡されましたが、検察側が公判で指摘した「クライアントファースト」の体質は真摯に反省されてしかるべきです。
電通だけの問題ではありません。
過労自殺した高椅まつりさんのお母様は、「全ての企業が労務管理を改善していただきたい」と訴えられました。
社員を大切にする会社が生き残っていく時代だと思います。
私は坂本先生の著作を読み、講演も聞き、とても感動しましたが、学者の机上の空論ではなく、事実に基づいた調査・分析なので、説得力がありますよね。
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