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現役の産業医が上梓した↓が話題を集めている。……
産業医が見る過労自殺企業の内側 (集英社新書)/集英社

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―その産業医の目から、“職場でメンタル不調に陥りやすい人”はどういうタイプの人だと感じていますか?
大室 私の元になんらかのメンタル不調を抱えて面談に来る人の8割ほどは『自分ひとりで抱え込みすぎた』と言う。その中でよく見られる傾向は“感情を言語化”するのが苦手だということ。例えば、職場で上司や先輩に「大丈夫?」と聞かれて、反射的に「大丈夫です」と答えてしまうような人がそう。特に年配の男性にこの傾向が強いと感じます。
同じ状況で嫌々ながらに「あぁ…はい」と答えるケースも一緒で、本人からすると言葉のニュアンスと表情で気づいてくれよと期待している部分があるのですが、現代の職場ではそうした“言外のメッセージ”が非常に伝わりづらい環境になっています。
―つまり、部下の“SOS”が上司に届きづらくなっていると…。それはなぜでしょう?
大室 上司が“プレイングマネージャー化”していることがひとつ。人手不足など様々な事情で最近は自分もプレイヤーとして働かなきゃいけないという上司が増えている。つまりオーバーワークの状態で部下のマネジメントに割くだけの余裕がなくなっていると。
もうひとつ、ビジネスの形態が大きく変容しIT化も急速に進む中で、上司が部下の仕事を理解しづらくなっていることも影響しています。……
上司も「やったことのない仕事」を想像するのは難しい。そうして上司と部下の間で共感というものを媒介にしたコミュニケーションが取りづらくなっていることも職場でメンタル不調者が増加する遠因になっていると思います 。……
大室 人間って緊張時には交感神経が優位になり、リラックスした時には副交感神経が優位になります。そこで、例えば目の前にライオンが現れたら、反射的に瞳孔がパッと開き、襲われても出血が少なくて済むように体中の血管がキュッと締まる。すると体中の血液が体の中心に集まり心臓がドキドキして、消化の働きが後回しになって食事が喉に通らなくなる。これが交感神経が優位になる“緊張”という状態ですね。
ただ、例えば原始時代にいたとしてもライオンに出くわすなんてことは頻繁にあるわけじゃないし、現れたとしても必死に逃げて、安全な場所に辿りついたところでリラックスし、ようやくまた胃腸が動き出す。すると、“そういえばお腹がすいたなぁ”と気づいて、食事を採るわけです。
何が言いたいかというと、身体の症状で見れば、過度な緊張を強いられる職場で働き続けるというのは“ライオンがずっと隣にいる”状態に近いということ。本来、自分に危害を加える外敵が現れた場合、その対象から遠ざかるというのが動物や人間の自然な行動であって、そこに“わざわざ行かなきゃいけない”というのは非常に矛盾した行動なんですね。
そんなことを繰り返していると、体に不具合が起きるのは当然の話で。夜になっても交感神経優位が続いて、なかなか寝付けなかったり、全く緊張すべき場面じゃないところで動悸が激しくなって胸が苦しくなったり…。これはいわゆる自律神経失調症の典型的な症状ですね。……
大室 抑うつ状態になると最悪、自殺に追い込まれる場合もあります。抑うつ状態、特に睡眠不足による過労が重なった際には冷静な判断力が失われますので「死ぬくらいなら辞めればいい」というメッセージは無力です。……
周囲の人は「○○さん、最近、ちょっとおかしい」と思っていることが多く、その兆候としては「電話に出ない」「メールの返信が遅れる」「やっと返信が届いたけど文章がおかしかったり、誤字脱字が増えている」といった傾向が見られ、シャツの襟が汚いまま…など、服装の乱れに表れることもあります。ただ、本人だけがそういう変化に気づく様子がなく、自分がうつ状態にあることにも自覚がないケースが多い。
―危機的な状況に陥っている自分に気づくためにはどうすれば?
大室 そこを自分で見分けるポイントとして考えなければならないのは、例えば会社の人間関係や長時間労働に苦しんではいるんだけど、休日には友達と飲みに行く、趣味のサーフィンをしに行く、彼女とデートする…この状態を保っているなら、まだ少しは余裕があるとみていいでしょう。逆に、好きなことに対してさえも気力が起きなくなっている状態であるなら、危険水位に達していると自覚するべき。すべての対策は今の自分の状況を認識するところからスタートします。
―できることなら、自分が危機的な状況に陥る前に普段から対策を講じておきたいものです。職場で過度なストレスを抱え込まないようにするには…?
大室 まず前提として、人間も動物ですから、脳の集中力が保てる時間には限度があり、一定以上の睡眠と休息は必要です。ただ、近年はパソコンやモバイル機器が発達し、情報量だけは莫大に入ってくるようになりました。これはバッテリーの容量は変わらないのに“アプリだけが増え続けているスマホ”のような状態。脳が慢性疲労に陥りやすい時代に生きているということをまずは認識することが大切です。
その上で、先にも述べましたが多くの職場が“言外のメッセージ”が伝わりづらい環境になっているので、本当にツライ状況で仕事を振られた時にはしっかりと言葉で伝えることが自分自身を守ることにもつながる。産業医の現場で感じるのは、上司の目を気にして「はい…大丈夫っす」と抱え込む人より、「正直、キツイです!」などと適度に感情を言語化できる人のほうが職場では“強い”ということ。もちろんあまりに「キツイ」を連発すると職場でやりにくくなるなど、その塩梅は難しいですが…。
ただし、どんな仕事でも体調より優先すべき課題はありません。やはり「キツイ」と言えることは身を守るために“大事なスキル”だと思います。
心身の健康を保つ上で必要なのは感情を押さえることではなく、感情の存在を肯定し、その表出の仕方をコントロールすること。そこが苦手だという人は、まずは自分の感情に耳を傾けることから始めてみるといいと思います。……
産業医の先生がご自分の経験からおしゃっることですから、説得力がありますよね。
職場がライオンのいる檻の中だったらとしたら、「死ぬくらいなら辞めればいい」というメッセージは無力。
今までそういう視点を持っていなかったのですが、確かにそう言えるのでしょう。
だとしたら、なおさら、そこに至るまでの前の段階が大事。
自分の状態を自分で把握しておくこと。
そして、いつもと違う場合、それを勇気をもって人に伝えること。
本人に自覚症状がない場合、回りが気を遣って、声をかけてあげること。
職場をライオンのいる檻にしないように、できる限りのことをしたいですね。
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