
野々宮希和子(永作博美)に向けられた秋山恵理菜(後の井上真央)の無垢の微笑を前にしたその時。
希和子の母性のスイッチがONになった瞬間でした。
「この子のために生きる」
母になることが叶わなかった希和子が、母になる道を選びました。
それは、不倫相手の娘を誘拐しての逃避行。
自分の亡き赤ちゃんにつけていた薫という名前で呼び、精一杯の愛情を込めて育てました。
映画の冒頭、法定でのシーンで、希和子はこう感謝の言葉を伝えます。
「子育てという喜びを4年間味わせていただき、ありがとうございました」
これは、紛れもなく本音でしょう。
本当の愛とは。命を育む母性とは。親子の絆とは。
涙の中で、いろいろなことを考えさせられる映画です。
秋山丈博(田中哲司)の妻、恵津子(森口遥子)は、被害者です。
夫に浮気され、その浮気相手の希和子に生んで間もない赤ちゃんを誘拐される。
大事な子育て期を奪われた恵津子には、戻ってきた我が子が我が子ではない。
愛しているのに、心が通い合わない。
可哀想ですけど、私は、彼女には感情移入できませんでした。
秋山にうまく丸めこまれて、やむ得なくお腹の子を堕した希和子のことを、体も心もからっぽだとののしったり。
娘が歌ってほしかったお星さまの歌がわからないくて、ヒステリックに泣き叫び、幼い子どもに「お母さん、ごめんなさい。お母さん、ごめんなさい」と言わせて、罪悪感を持たせたり。
希和子のように、法的罪はありません。
でも、人の心を傷つけています。
自分では気がつかないうちに。
しかも、自分だけ辛い目にあっていると思っています。
それぞれに皆、十字架を背負って生きているのに。
自分の枠の中しか見ず、人の悪口を言うところも、私は好きになれませんでした。
希和子と恵理菜、そして、ルポライターであり、エンジェルホームなる女性の駆け込み寺で一緒に過ごしたことのある安藤千草(小池栄子)は、心に深い痛手を負いながらも、決して人のせいにはしません。
なぜ私だったのかと、過去と対峙することはあっても。
恵理菜が好きになった岸田孝史(劇団ひとり)は、父と同じように家庭を持つ男性。
岸田に自分のどこが好きかと聞かれて、「嘘をついているのにバレバレなところ」と言い、我が身の妊娠のことは告げずに、自ら身を引くところは、切なくも愛おしいです。
タイトルの八日目の蝉。
蝉は、7年もの間、土中で生活して、地上に出たら、たった7日で死んでしまいます。
あまりにも短かくて、可哀想。
薫(恵理菜の子ども時代)はそう話していました。
大人になった恵理菜は言います。
蝉がもし8日目まで生きると、仲間は皆死んだのに、自分だけ生き残り、その方が哀しいと。
クライマックス近くで、千草は恵理菜に語りかけ、恵理菜も納得します。
八日目の蝉は、他の蝉が見られなかったものを見ることができる。
希和子も恵理菜も八日目を生きています。
希和子は、写真室さんで薫の手を握り、ママは何もいらない、全部持って行ってと言った時、知っていたのだと思います。
すべてをなくしても、薫との幸せな日々の思い出があれば、生きていけると。
誘拐犯希和子の逃亡に、希和子逮捕後の恵理菜の葛藤を描くという暗いテーマ。
にもかかわらず、重苦しく終わらないのは、ラストシーンが爽やかだからでしょう。
希和子が逮捕される時に叫んだ言葉は、「この子はまだ、ご飯を食べていないんです」
自分のことより、子どものことを気遣った姿でした。
そして、子どもを生む決心をした恵理菜のこの言葉には、明るい希望があります。
「こんな綺麗な海や緑や青い空を、このお腹の人は見る権利がある」
そうです。この権利を奪ってはいけません。
かつて希和子が恵理菜に言った言葉を、今度は恵理菜が生まれ来る子どもに言ってほしいです。
「いろんなきれいなものを一緒に見よう」
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るんるん♪語録/5月1日
私からあなたへ。あなたから、まだ見ぬ誰かへ。
愛のバトンタッチ。命の連鎖を大切に。
清き1票を


合格の桜咲くように 縁起のいい富士山


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どうもありがとうございます。感謝のうちに
