5/4新国立劇場バレエ「マクベス」「夏の夜の夢」シェイクスピア・ダブルビル感想 | 慧琳の鑑賞眼

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 うーーん特に感動しなかった「マクベス」。

 

 名前は知ってるけど話を知らない名作あるあるのような感じで、公演プログラムを読んで話を理解し。ストーリー的にはマクベスが魔女の予言を耳にし、心穏やかならぬ様子で破滅していく過程が、夫人とのパドドゥを間に挟みながら進行していく。演劇やオペラによる言葉のやりとりを知らないので、こんなものかーと思って見ていたら寝ていた!ガーンそういえば新国演劇の王様シリーズを2つほど見ましたが、あれも中だるみして寝た記憶がある。。。

 

 マクベスは終始受け身でずっと悩んでいるが、マクベス夫人がマクベスをけしかける(ストーリーを知っている人に聞いたところ、この人物関係は合っているそうですね)。夫人はファム・ファタールかも受け取れるような演じ方、振り付けでした。どこで読んだのか忘れてしまったのですが、やはり夫婦間の「精神的な」依存関係に加え、「肉体的」なものも表現されている、と。終演後のアフタートークで福岡さんが「夫人からの圧は脇から斜めに来る。嫌いじゃない。」というようにお話されていました。夫人からマクベスへと向かう目力も迫力がありましたが、リフトも迫力があり。「毎日振り回されて(笑)」という米沢さんのお話もあった通り、腰を反らせて脚が水平になる角度でのリフトが何周もあって印象に残りました。

 

 面白いと思ったのは、妊婦役がいること。バレエは踊りがメインですから基本「踊れる人」しか配置しないのが当たり前というか。そこでロイヤルバレエの「くるみ割人形」を見ると車椅子の人が出ていたりする。踊りと関係のない人も舞台上に配置し多様性を描くというのでしょうか、そこが演劇的だなと思いました。

 

 世界初演作品の意味というのは、音楽を世に紹介する役割もあると思いました。「マクベス」の作曲はミュシャという女性作曲家(画家ではない)。バレエ用に作曲されたはずがバレエになったことはなかったという。この曲を元に彼女が書き上げた組曲を、マーティン・イェーツが編曲しました。現代音楽ですが、マクベスの暗い心情が浮かんでくる印象的なバイオリンのフレーズなどとても良かったです。

 

 楽しかった「夏の夜の夢」。コロナ禍の配信でスウェーデン国立バレエのものを見た記憶がありますが、小悪魔パックは山岸凉子の「アラベスク」でノンナが抜擢される役ですよね。

 

 ここで面白かったのは、舞台上で寝ている子ども。ここでもやはり踊りとは関係のない人を配置しているところが、演劇的。あ、足動いた(笑)

 

 また、トウシューズの使い方。ロバとなった男性が、動きの制約としてトウシューズを履いて踊ります。ちょこまかした動きや背中を木にすりつける「ロバらしい」動きがとてもかわいくて。木下さんが素晴らしかったです。

 

 「夏の夜の夢」はメンデルスゾーンの有名な楽曲が出てくるので見せ場や聴き所が分かりやすい(ただし、結婚行進曲の振付が歩くという点で舞踊が音楽に譲っているところですよねびっくりマーク)。ホルンの哀愁を帯びたメロディーを堪能できた上に、オベロンとティターニアの合わせアラベスクパンシェ(?)も美しい形で悶えます。その点、「マクベス」は知られていない音楽というところもあり、聴き所がなかったように思います。見せ場はお気に入り井澤駿くんの血のりお化けシーンかもしれませんが、見せ場、聴き所を観客がこれから発見できるという醍醐味でもありますので再演に期待です。