東京バレエ団「上野水香オン・ステージ」2/10 | 慧琳の鑑賞眼

慧琳の鑑賞眼

舞台芸術の作者、演者の思いを受け取れるように鑑賞眼を磨いています。分野横断的に書いています。詳細はアイコンクリックの後、プロフィール、メッセージボード、パソコンならばブログトップをどうぞ。

 ガラはあまり好きではないのですが、推しダンサーの様子が見たくなったので見に行って来ました音符
 (注:このブログは2721字で書かれていますので、読む気がなくなるほど長いです)
 
 小さい頃は上野さんをテレビで見て、「私はバレエをやる前から頭まで脚が上がったんです」とおっしゃっているのを「すごい人だよねえ」と母と言い合っていた記憶があるのですが、今や私も上野さんを東京バレエ団の公演の一部として見られるようになってしまいましたよくるくるくるくる感慨深いですねおねがいおねがい
 
 熊川哲也、吉田都、草刈民代、上野水香、(日本人に絞ると)などは「誰もが知っている」ダンサーです。つまり音楽界同様バレエ界にも、80年代から00年代くらいまでは「主流」が存在したのですが、現代はその主流が存在しなくなったと言われています。ネットで見つけた自分の「お気に入り」を楽しむのが今の鑑賞方法で、その人が有名であろうとなかろうと関係はないのです。つまり、スターが存在しなくなった代わりに誰もがそこそこ知ってもらえる流れに変わってきたのです。東京バレエ団しかりで上野水香に継ぐスターは現れませんでした。その代わり、なんでも卒なく踊れる小柄なダンサーやSNSで活動を発信するソリストが、舞台でも印象に残るようになってきました。
 
 筆者がバレエ雑誌「クララ」を読んでいる時代には東京バレエ団に二階堂さんという、やはりプロポ―ションが良く技術も高く、入団してすぐに「ザ・カブキ」か何かの主役に抜擢された方が特集されていたのですが、気付いたら退団されていて、ネットで検索したらFacebookが出てきて、その方は今ご結婚されて地方にいらっしゃるようなことが書いてありバレエをやめたびっくりマークと分かったことがあります。素質があっても続けるのは大変難しく、その頃はまだ上野さんがバリバリ主役を張っていらした頃でしょうから、上野さんがいたら私は絶対に二番手・・・と思ったのかなど色々想像してしまいますが、とにかく後が続かなかったですね。
 
 さて思ったことをつらつら書きましたが、ここから感想を少し。自分の名前がついた公演というのは大変な緊張があると思いますが、上野さんはいつも通り舞台をまとめてくださるのでもう素晴らしいとしか言い様がないですね。上野さんは、ともすると役によってはイマイチ合ってないものもあるのですが、それは古典の話。今回は上野さんの魅力を光らせるための演目であり、かつ演目的にも現代と古典のバランスがよく、内容がとても良かったと思います。
 
「白鳥の湖」 第2幕より
プリマ=白鳥ですから、この演目で感動させられるのがバレエの醍醐味ですよね。昨年の全幕の「白鳥」を上野さんで見ており筆者は全幕のほうが好きなので動きが固いかなぁなどと思ってしまいますが、アラセゴンで頭の上まで爪先が上がる瞬間をあんなにも印象的に残せるのは日本では上野さんしかいないのではないでしょうか。白鳥が捌ける前のスシュ、スポットライトが当たって皆が注目する中一ミリも動かず何秒か止まっていられるのはすごいなと。
 
「小さな死」

Twitterの感想では「踊る組によって雰囲気が全く違うので是非キャストとパートを変えて見たい」というものがあった通り、同じ衣装、同じ曲なのにパート毎に全く雰囲気が違いますね。筆者は伝田さんがお気に入りです。いつもガマーシュなどコミカルな役になる樋口さんは、役がなくなると素敵な雰囲気でシュッと踊っていて素敵ですラブラブ柄本さんの早着替えと俊敏な動きも意外。以前のプニとした重々しさが見えなかったです。

 
「シンデレラ」よりパ・ド・ドゥ
椅子をくるくるして座ったままプロムナードをするのが面白いですが、このパドドゥ、見どころどこなのでしょう?もしかして衣装?Youtubeで予習しましたが皆振付が違うみたいです・・・ゴメスさんの怪我でアルバレスさんがパートナー。終了後幕から拍手が聞こえて来て皆が見守っていたようですね。とても良かったですよ。
 
「パキータ」より
推しの中島さんに注目するはずが、エトワール=秋山さんが出てきて一気に目を奪われました。。。いやーエトワールってあんなに上体をたっぷり使ってキトリなみにキリッとやるもんなんですね・・・やり過ぎ説浮上。その割にエトワールが微妙でしたが、筆者はエトワール、誰がやっても嫌いですチーン自分で踊るか。音楽もドッシャンガッシャンしているのが気になったなあ。中島さんの踊り方は本当に好き、平木さんのVaは音楽も好きで、バロネで肩を振る振付かっこいいブルーハーツコールドの振付も、方向に変化をつけてて面白かったです。
 
「チーク・トゥ・チーク」
ゴメスさん、大丈夫なの?という心配が大きな拍手に加算された登場。筆者はこの作品を初めて見たのですが、草刈さんがやっていらっしゃると。テーブルの上で踊るの怖くないのかなあと思うほど、ステップが忙しく、また黒透けタイツで雰囲気がガラッと変わって大変おしゃれでしたピンクハート
 
マルセロ・ゴメスって「バレエの王子様」に出ていた人かな?
 
「ボレロ」
もうボレロそのものは7回目くらいで、上野さんのは3か4回目くらいなのですが、インタビューで「ボレロの踊り方が変わった」と本人がおっしゃっていた通り、哀しげで懇願するような表情があったり、長い髪のかき上げ方に色気があったりと、今までの無機質な印象から変わったように思いました。今回は推しの大塚さんがセンターにいるということで、大塚さんだけを双眼鏡で見続けるという贅沢なボレロの見方もできましたハートんで、リズムの振付をしっかり見ていたら、今まであまり気にしていなかったんですけど、手を口から下半身にかけてゆっくり下ろしていく&腰を回す。控えめですが、これは完全に「エロい」性的振付だ・・・母は「女性が真ん中だと、「女を崇めたてる男たち」で嫌だよ・・・これはジョルジュ・ドンがやるから良いんでしょ~」と言っていたのですが、少しピンと来ました。ベジャール、春の祭典なりーーー!!(謎)池本さんがなぜ衣装を着るとお腹もっちりに見えるのか、上裸で筋肉がはっきり見えて分かりました。樋口さんは最後の最後でセンターに来る役回りでしたが、11日ではセンターだったそうですね流れ星
 
↑会費ヒヒヒ
 
 今回の公演とは関係がありませんが、ロシアウクライナの戦争に伴って再び多くの日本人バレエダンサーが活動拠点を日本に移しています。海外で活躍する日本人はさすが、意見がはっきりしておりSNSで「日本のバレエ団はここがおかしい!」など積極的に発信していますからすごいですね。声を上げることで何かは変わるでしょうから、是非諦めずに言い続けてほしいと思います。読んでいるこちらとしては頻繁すぎるとちょっとミュートしたくなりますが笑