ロイヤル・バレエ・ガラAプログラム感想 | 慧琳の鑑賞眼

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 もうU25も終わってしまうということで、金に飽かせてAプロとBプロ両方買いました。U25とそうでない席の価格の差が激しすぎて、来月からは絶望します。
 
 ところで、ロイヤル・ガラのチラシを見た時から「知らない人ばっかり・・・」と思ってしまいました。楽しみなのは高田茜さんくらいでした。なんか時が流れたというか、私が日本人バレエダンサーばかり追いかけているのもあって、今の「常識」「超有名」バレエダンサーをあまり知らないなと気付きました。それこそバレエ団の「顔」なるダンサーがいる時代は過ぎて(ほぼ皆引退)、現代はSNSで発信しているダンサーを、おすすめに従って見るか、たまにネットのインタビュー記事などをあさって読むか、しかなくなっているような。私の「常識」「超有名」海外バレエダンサーの情報は、10年前に定期購読していた「クララ」で止まっておりまして、分かったのはマニアネラ・ヌニェスさんとサラ・ラムさんと高田茜さん。佐々木万璃子さんはローザンヌで、平野さんはバレエ雑誌からかなあという感じです。後はSNSでヤスミン・ナグディを連呼しているアカウントがある笑
 
 結論から言うと、「ガラって、うーん(微妙)」です。まずガラ公演の良いところは、有名バレエダンサーを次々に見られる、しかも超絶技巧がたくさん見られる、というところかなと思います。ですが、それを上回るデメリットと言いますか、①皆すごいからお気に入りが発見できない②プログラムの暗記なんて無理なので、結局誰で何の作品か分からないまま次から次へと見ることになる③ガラ定番の演目構成で飽きる・・・もうバレエの発表会みたいに「1.白猫の踊り 山田花子・山田太郎」みたいにアナウンスしてくれても良いのでは!?(いや、確実に雰囲気ぶち壊しだろうな)
 
 ということで、隣の席で「セザール・コラレスってすごいんだよ」と言う声や、「ヤスミン・ナグディになりたい!」というインスタの声などダンサーに関する評価はできるだけ拾って行きましたが、トータル「うーーーん」まあU25で良かったわな、という感想です。
 
Aプログラム
「明日」フランチェスカ・ヘイワード、セザール・コラレス
こんなことを言ったら現代バレエが半分くらい見られなくなりますが、本来は言葉のない舞踊というものを、言葉を付けた曲で踊ることはナンセンスです!いかに言葉を使わずに訴えるか、観客はメッセージを読み取るかというところがバレエという芸術です!
とはいうものの、この作品、「謎」でした。歌詞も抽象的ながら踊りも抽象的だったので、「舞踊を言葉で説明する」ことにはなっていなかった。トップバッター、セザール・コラレスだったんですよね、今となってはまっさらで見られたのが信じられないです。後述する筆者の感想は酷評です。この踊りは、セザール・コラレスがクネクネしていたのと、赤いキャミソールスカートのフランチェスカ・ヘイワードを肩一文字リフトしていた記憶があります。
 

「ジゼル」サラ・ラム、マルセリーノ・サンベ

金髪のジゼルだ!と珍しく思いました。2人とも息が合っていて、本当に浮いてるようでした。サンベのバリエーションもしっとりしていて良かったですが、脚の筋肉が少し気になります。サラ・ラム、単体ではジャンプが全く浮かない感じで、物足りなかったです。舞台装置の柳があまりにも垂れ下がって豪華なセットだったので、お岩さんが池から上がってきたらどうしようかと思いました。
 

「ル・パルク」ヤスミン・ナグディ、リース・クラーク

あー世界バレエフェスティバルで見たなあという思い出が。それにしても、中盤でキスをしたまま旋回する振付なんて、コロナ禍で非接触が求められている今、なぜこれを選ぶのだろうかと思いました。この時はまっさらな状態で見たヤスミン・ナグディ、登場して突き立てる爪先がとてもきれいだったことを思い出します。後ほど酷評に変わります。ヤスミンが男性側を責めてるような印象でした。
 

「アポロ」マリアネラ・ヌニェス、平野 亮一

初めて見ました。レオタードで踊る作品の時、双眼鏡を覗くと下着を着けていないダンサーがとても気になります。小さい頃からレオタードを来ているから裸のままでも気にしないand汗をかくから余計な装備はしたくないのでしょうか。。。この辺からぼーっとしてしまいましたが、神々しいなと思ったことは覚えています。そして、平野さんの体格が厚い。格闘技家のようでしたが、街で出会った筋骨隆々の人が「職業は、バレエダンサーです」と言ってもバレエもスポーツみたいなもんだし納得するよなと勝手に想像していました。
 

「白鳥の湖」より第2幕(白鳥)のパ・ド・ドゥ佐々木 万璃子、ウィリアム・ブレイスウェル

そしてローザンヌ以来の佐々木 万璃子さん。あの頃は10代でしたでしょうから、筋肉が厚くなり動きの質も変わっていました。筆者は佐々晴香さんの「白鳥」が最も良いと信じてしまっているので、今回のはギコギコしているように見えてしまいました。衣装も、王子は警察官かな?という制服チックな感じでビミョー。
 

「ロミオとジュリエット」より第1幕のパ・ド・ドゥ高田 茜、アレクサンダー・キャンベル

素直に泣けました~茜さんの儚い踊り、刹那的な笑顔と一瞬の喜びが浮かんで消えて、思いが高まって・・・!リフトがとてもスムーズで安定していました。ここだけでなく皆さん総じてリフトが安定していて素晴らしかったです。ちなみに舞台セットはNBSが調達していると考えると、上野の森バレエホリディで写真スポットになっていたやつかな?(なお東京バレエ団公演で使っていたバルコニーは違うものであった)最後、バルコニーのジュリエットと地上のロミオが手を伸ばし合うシーン、手が届きそうで届かないのがまたぐっと来ます。
 
第二幕

「コンチェルト」 より第2楽章のパ・ド・ドゥサラ・ラム、平野 亮一

サラ・ラムさんは、こういった抽象バレエで本領を発揮しているなと思いました。動きの質や音感や表情など、全てにストーリー性よりも動きのシンプルな美しさを追求している感じがしました。この作品、背景にはオレンジ色の円が映し出されます。夕日なのでしょうか?その前で堂々と踊るラムさんと平野さんは、また違った神々しさを感じました。ショスタコーヴィチの音楽にも鳥肌が立つ何かがありました。
 

「マノン」第1幕(寝室)のパ・ド・ドゥフランチェスカ・ヘイワード、アレクサンダー・キャンベル

最初に出てきた人か、確かに映画の主役をやった話はtwitterあたりで見た記憶あるけど・・・という失礼極まりない印象で見たからか、荒々しいなと思いました。これって、マノンはファム・ファタールだから蠱惑的でも良いし、普通の純粋な少女という演じ方でも良いのだと思います。「ごく普通の」女の子を踊ったら、恐らくちょっと荒っぽい感じになるのかな・・・と思いながら見ました。日本人、少なくとも私が見た新国立劇場ではお目にかからない「マノン」でした。
 

「精霊の踊り」ウィリアム・ブレイスウェル

んで?曲聞いたことあるけどなんだっけ?
 

「海賊」ヤスミン・ナグディ、セザール・コラレス

セザール・コラレス、バリエーションで下手最奥から登場し、上手前まで舞台を斜めに掛けるアリ。ちょっとやりすぎかなと💦ヤスミン・ナグディはパンフレットによると学校時代から注目されていたということから優等生タイプなんだろうなと想像にたやすい。優等生ってともすると天才とは違うから特徴がなかったりするよねと思いました。
 

「ジュエルズ」より"ルビー"高田 茜、マルセリーノ・サンベ

びっくりしたのは高田さんでした!役によってガラッと雰囲気が変わるダンサーなのですね!!さっきの儚さはどこかに「消え」、赤の衣装のイメージ通り強気で魅惑的な宝石。バランシンは動きの変化球で見せてくる振付家なので、最初はおっと思ってもだんだん「慣れてきてしまう」のがもったいないところ。これまたぼーっとしましたが、男性の衣装は道化師なのでしょうか、色の異なるヒラヒラが交互についているものでした。
 

「インフラ」よりパ・ド・ドゥサラ・ラム、エドワード・ワトソン

なんと私エドワード・ワトソンを知らなかったので、踊りの時は全く注目していませんでした。ここにしか出ない人がいるなって把握していませんでした。。。寝る時みたいなダボダボシャツと短パンで踊ってた記憶しかない・・・!サラ・ラムさんはやっぱりこういうのが良いです。
 

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」マリアネラ・ヌニェス、リース・クラーク

そして、一同「待ってましたーー!!」と言いそうなマリアネラ・ヌニェス様のグラン・パ・ド・ドゥ。しっかり安定した技術を披露。Instagramでもリハーサル動画を流していましたが、ところどころしか見ていなかったので、衣装が付くとInstaの時とはまた違ったように見えました。チャイコフスキー・パドドゥはところどころポーズを決めるときが荒っぽいというか、凶暴な感じがしました。でも次にまた優雅さが見えて・・・という流れ。凶暴性のある優雅さと言って良いでしょうか?優雅って、歩幅狭いだけじゃない?とも思ったり。リースクラークも、回転などバラケはしないけど安定してもいないという感じ・・・。背が高いと体をコントロールするのが大変そうですね。
 
 いつもは東京バレエ団を見慣れているので、体格差の違いが印象に残りました。特に、男性ダンサーの上背の筋肉の厚さ、爪先や足裁きの美しさが総じて異なり、レベルが高かったです。また、女性ダンサーもある程度筋肉質というか、厚みのある体型で存在感や踊りの質感(どっしりした感じ?)が全く違うことを感じました。全員似たような体型で、バレエ団のトップは似てくるのかなと思いました。また、マリアネラ・ヌニェス以外の女性は小柄でしたね。