私は、1989年から司法研修所で修習(43期といいます。)し、それから実務の世界に入りました。修習という期間は、ただ法律的知識を勉強しただけの者が、実務法曹として仕事を始めるにあたり社会的に必要な制度であり、実務への橋渡しとして必要な制度といえるものだったと思います。
その修習期間は、当時は2年間でしたが、だんだん短くなり今は1年です。そして、当時は、国家公務員一種採用者と同額の給与が出ていました。ボーナスもありましたね。
特にロー・スクールに行く必要もないし、合格すれば2年間は給与が出て教育してもらえるから難しくても司法試験を頑張って受けよう、当時、そう考えていた法曹志願者は多かったと思います。
ところが、2011年11月入所の65期から給費制から貸与制、つまり貸付制度(しかも保証人を付けられない場合はオリコで保証させる)に変わりました。
これは、あの「司法改革」という弁護士激増政策の一環です。つまり「人数増やしたんで全員の給与なんて出せまへん!」ということです。
法曹志願者が激減する中、昨年、給費制はある程度復活したのですが、2011年から2016年までの修習生だった法曹(これを「谷間世代」と呼ぶ人もいますが)約一万人だけ、いわば割りを食う形で給与が出ていません。著しく不公平になっています。あまりに不公平・・・弁護士バッジの天秤だって傾いちゃいます。
ただでさえ、人数が増えて仕事も減っていて、おまけにロー・スクールの借金もあるのに・・・!という若い法律家の仲間がたくさんいるわけです。
正直、私自身は、直接65期から70期の弁護士に接する機会もあまりなく、よく理解していませんでしたが、日弁連会長選挙の活動を始め、弁護士の世界をめぐる状況が惨憺たる感じで積極的に情報を集めました。
ちなみに、今の日弁連執行部は債権者=最高裁には「お願いベース」の話しか持っていってないようで、完全に諦めています。
この日弁連の姿勢は、まさに権力に対する屈服であり、今、戦争にも、改憲にも、ストレートに反対できない姿勢の表れだと思います。
借金まみれの弁護士たち・・・そりゃ権力に逆らって人権課題に取り組んだり、戦争に反対したり、やっているヒマあったらカネ稼がなきゃ!になっちゃいますよね。
弁護士全体に対する分断と社会的信用を失わせる、つまりは牙をもぐための「攻撃」だと思います。
だから、私たちは、この問題でストライキを提起しようと思います。
弁護士のストライキ?どうやるの?・・・まあ、確かにそうなんですけどね、ですけど、2014年には法律扶助の削減に抗議してイギリスの弁護士たちはストライキを行ったはずだし、2015年にはフランスの弁護士も国選弁護の報酬減額に抗議してストライキを行っています。
だから、出来るのです(やったことないけど)。私自身、ストライキの経験は、大学卒業の頃、学費値上げ反対のストライキに加わった程度ですが、弁護士仲間に対する理不尽で、不公平な取り扱いだし、見過ごすわけにはいかないでしょう。
そもそも、司法改革=弁護士激増政策自体が、私たち、きちんと権力と対峙する在野法曹に対する攻撃だったのであって給費制廃止が間違っていたわけです。
誰もが本当に大変な時です。余計なことをやっている余裕はありません。・・・力を結集すること、つまり団結することも本当に困難です。それゆえ、時代も弁護士会も「戦前的」に岐路に立っています。だから、ストライキを。ストライキをやったことがないからこそ、やってみたい。具体的にどうやるか、本当に出来るのか、結局、勇気や根性、そして友情が試されるのでしょう。