「この手紙を君に書くくらいなら、自分の親指を切り落としたほうがまだマシであることは間違いない。自分の人生の半分を誰かに依存しているのは、本当に心がつぶれる思いだ。」
「私のために君が大いに-どうにか成し遂げられる範囲を超えてすら-尽力してくれたことを考えると、悲嘆の叫びで気を年中うんざりさせなければならないのを私がどれほど嫌悪しているか君にいう必要もまずない」
「君に最後に送ってくれた金と、ほかに借金したい1ポンドは、学校の授業料を払うためになくなった。そうすれば、一月にその倍の額を借金することがないからね。」(『エンゲルス』トリストラム・ハント)
これは、エンゲルスに経済的支援を求めるマルクスの手紙の抜粋ですが、世にマルクス・エンゲルスと知られ、むしろ、「マルクス主義」と呼ばれ、どちらかという「第2バイオリン」のポジションのフリードリヒ・エンゲルスは、かなり献身的に、一方的にマルクス一家への経済支援を行っていたことはよく知られていると思います。しかも、必ずしも貧乏ではなかったらしいマルクス・・・。
かの『共産党宣言』(『共産主義者宣言』)を連名で書いた後、マルクスの『資本論』の作成を援助することを自分のなすべきことの中心に据えたエンゲルスの友情というのはすごいなあ、と思います。
それにしても、このように「友情」が、素晴らしい思想を組み立て、素晴らしい音楽を作り上げるという歴史・・・19世紀のマルクス・エンゲルス、20世紀のビートルズ、ローリングストーンズ・・・。
やっぱり、人と人の出会い、結びつき、議論、協力、というのが何かを生み出すのでしょうか? ・・・確かに、そうだよなあ、一人で考えて、一人で楽器いじっててもツマンナイし・・・。
確かに新しい何かを「発明」した天才たち。しかし、その仕事は、案外、それまでの思想の継承であり、黒人音楽、アメリカンポップス、さらにはヨーロッパの伝統的音楽の発展、とはいえます。
マルクス・エンゲルス以前から、共産主義・社会主義は存在していたわけだし、ビートルズ、ストーンズ以前にブルースやR&Bなどの影響を受けたロックンロールも存在したわけですけど、それらを十分に研究・吸収し、それを発展させることにより、より新しい、そして普遍的な魅力を爆発させた「友情」。
なんかそういうの、いいですね。もちろん、一人で思考する時間があってのこととは思いますが、誰かと真剣に議論し、作り上げることに取り組むという「協働作業」。何かと「個人」に分断されがちな今だからこそ、そういう関係がいいなあ、大事だなあ、と改めて思う次第です。
エンゲルスは「マルクスの全体的な考え方は、学説というよりは手法なのだ。それは出来上がった教義を提供するよりは、むしろさらなる探究を手助けし、そのような探究のための手法を与えるものなのだ。」と言っています。
キース・リチャーズも「自分たちの役目は先人から伝統を受け継いで後輩に渡していくことなんだ。」と言っています。
自分たちが、承継し発展させたものを、さらに、どんどん承継・発展させていってね、ということだと思います。縦の時間軸でも友情を繋いでいこうということかな。
まあ、みんなでなんかやりましょ♪何かね。