現在、表向きには、日本においても「取調べの可視化」を進めるという議論が存在していると思います。日弁連執行部が、昨年、「盗聴拡大・司法取引・匿名証人」などの政府のとんでもない治安立法構想を飲み込み承認したのも、その「取調べの可視化」への一歩前進という大義名分でした。
言葉通りの意味からすると、「取調べの可視化」とは警察・検察の取調べ状況を「私たちに」見えるようにする、つまり、権力の暴走を「私たちが監視する」、という意味だと思いますが、現実に、そんなことがなされる気配は当然ながら全くありません。
今、進められているのは、そのような「幻想」を利用して、むしろ、逆用するアイデアです。
取調べをする警察・検察側が「権力の側で好きなように、都合良く、録音・録画し、好きな部分を見せる」という仕組みです。
時々、被疑者や被告人側が「隠し録り」した取調べ状況が世の中を騒がせますが、本来、これこそ「取調べの可視化」なのです。
しかし、私の担当した事件でも、刑事も検察官も、徹底的にそれを嫌い、違法とまで言い放っていました。
本当の意味での「取調べの可視化」なんて権力側はやるつもりは毛頭ないのです。
可視化の実現は簡単です。逮捕の令状が示されたり、現行犯逮捕が告げられた時点から被逮捕者・被疑者側が、iPhone等を持つこと、いかなる瞬間も録画・録音し続けることを認めない限りは逮捕・勾留は出来ない、ということにしてしまえばいいのです。
正式な取調べではない場面で行われる嫌がらせ、黙秘に対する公安刑事や検察官の恫喝などもばっちり収めるようにして。
これが「取調べの全面可視化」であり、未だ、「被疑者の隠し撮り」に異様に警戒している警察・検察側権力が、認める訳はありません。日弁連執行部の方々は権力と鋭く対立する公安事件等の刑事事件に対する弁護人としての感覚が極めて希薄、と指摘せざるを得ません。
盗聴は拡大するわ、取調べ状況は権力側でのみ録画するわ、では、ただただ、警察・検察のやりたい放題なのにね!
