怒れる小さな茶色い犬-121202a

「未来は、日常的連続感へ、有罪の宣告をする」(あとがきより)

毎度期待を裏切らないですね。いつか
”時代が作品に追いついた”
と評されたようだけど、まさにその通りかと。
因みに彼の作品の中では割と分かり易い方ですかね、
特有のグニャリな展開?もこの作品では皆無ですし、、
それでもスキルが足らないあたしは既に2回も読んじゃいましたけど。。

水棲哺乳類の量産…
それに関わるまたは関わる事のできない者とのミステリー。
至極簡単に表現すればそういった内容ではあるけど、
真骨頂である医学に明るい緻密でリアリティのある描写で説得力があります。
加えてそうした極端に現実的な場面と、相反するように展開される
ロマンチックで哀愁を帯びた場面とのギャップが絶妙で
いやもうこれは読まないと…表現しようがありません(逃げ…苦笑)

全編を通して謎解きの要素も十分楽しめるし、
でも個人的にはラストに挿入される少年の話が大好きですね。
”レスリング競技で反則の鰓おさえ”といったユーモアも交えつつ、
少年の最期は慈悲に溢れている。

「しかし待望の風は吹いていた。とりわけ風が眼を洗い、
 それにこたえるように、何かが内側からにじみだしてくる。
 彼は満足した。どうやら、それが涙であり、
 地上病だったらしいと気づいたが…もう動く気はしなかった」

またして安部公房の作り出す世界に引き込まれてしまった。
1度読んだらお終いの消費を目的とした大衆小説?とは違い、
こうした(良い意味で)薄気味悪い読後感…
それに当分浸っていたいと思えるような内容は
やっぱり安部公房ならではだと思う。




第四間氷期 (新潮文庫)/安部 公房