カンガルー・ノート/安部 公房


ある朝目覚めると、自身の脛(すね)に
カイワレ大根が生えてきた男の物語…。
もうそれだけで興味津々です(笑)

てことであたしは安部公房、これで3作目。
他人の顔砂の女、そして今回のカンガルーノート
これまで読んだ作品もそうだけど、
今作もとても印象に残る素晴らしい作品でした。
因みにこれは生前最後の長編(遺作)なのだけど、
物語は三途の川、賽の河原…と死を連想させるもので、
晩年の作者と重ねずには居られません…。
しかしそれを差し引いても間違いなく傑作です。

冒頭に書いた通り、脛にカイワレが生えてきたり、
病院のベッドが自身の意思で動き出し、
なんとも荒唐無稽な冒険が始まるのだけど、
しかし文章の一節一節は現実味を帯び、
加えて医学に明るい公房特有の身体に対する
緻密な着眼や、ユーモアセンスにも富んでいて、
…いや、もうどこからどうこの魅力を
伝えればいいのかわからない位(苦笑)
長編でありながら、オムニバスな要素もあり、
読後、どこからどう読み返しても楽しめます。。

しかし万人受けはしないんだろうなぁ…。
公房がルイス・キャロルに影響を受けている。
というのは有名な話のようで、
この作品は特にリンクすると思われる。
なのでアリスとか好きな人には受け入れられるかも?
例えば点滴袋が烏賊(イカ)になってる場面とか、
死後?をもビジネスとして成り立たせる場面、、
加えてどんどん焼きとたいやきを巡る現実的攻防等、
その絶妙なバランスがもうほんとにたまりません…(笑)

ラストの解釈をどう読み取ればいいのか?
あたしにはまだわからないのだけど…。
それも含めて大好きな作品になりました。