GRAPEVINE、田中っちの愛読書として知られる安部公房。
あたしにとっては「他人の顔」に続く2作目。
安部公房といえばこの作品がメジャーなようだ。
新種の昆虫を発見する事を夢見る男が、
昆虫採取のために海辺の砂丘へ訪れる。
男はそこで不思議な体験を課せられる…。

当初、男の置かれた環境はそれまでの男の経験からは
到底理不尽に思える内容であったが、
時間が経つにつれ男の心にも変化が生じる。
そこには労働と報酬といった人間が生きていく上で
最低限必要な要素が極めてシンプルに存在し、
それ以上の理屈は意味を成さない。

”労働には、行方の当てなしにでも、
 なお逃げ去っていく時間を耐えさせる、
 人間のよりどころのようなものがある”

上の引用を説明するのは難しいので割愛するが、、
いずれも”幸せ”というものを計る基準は必ずしも
絶対的なものではなくあくまで相対的なものだ。
生活環境が酷であろうとなかろうと、
また生活水準が高かろうと低かろうと
”幸せ”を感じる度合いはそれらに比例しない。
そしてその根底(前提)にあるのはやはり”労働”である。

その設定があまりに非現実的であるせいか
場面場面の光景をイメージするのに苦慮したが
それは単にあたしの想像力の幼稚さに過ぎない。

まだ安部公房はこれで2冊しか読んでないが、
あたしが彼の作品で感じるのは作者が医学部出身
であることによる身体描写(特に皮膚)の緻密さもある。
しかし特に強く感じるのはいずれも主人公が
一般的に好かれる人格でないということだ。
具体的には多少自己中心的で非常に理屈っぽい。
だからといって全く嫌気を覚えるかと思えばそうでもない。
それはきっと小説の主人公だけではなく
誰しもが持つ人間としての嫌らしい側面であり、
読む側としても幾分その感情は共感できるからだろう。
(或いはあたしの性格に似ているからなのか?)
そういった意味で安部公房の作品はあたしにとっては
自身を改めて見つめ直す事のできる作品だと思う。

しかし彼の作品のラストシーンは、、
文章で言い表すのがなかなか難しいんだけど、、
鳥肌モノですね…。

 安部公房
 砂の女