『問注得意抄』(佐前)[真跡] | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 今日 召(め)し合はせ御問注の由(よし) 承(うけたまわ)り候(そうろう)。各々 御所念の如(ごと)くならば、三千年に一度花さ(咲)き菓(このみ)なる優曇華(うどんげ)に値(あ)へるの身か。西王母(せいおうぼ)の薗(その)の桃 九千年に三度 之(これ)を得るは東方朔(とうほうさく)が心か。一期(いちご)の幸ひ何事か之に如(し)かん。御成敗(ごせいばい)の甲乙(こうおつ)は且(しばら)く之を置く。前立(さきだ)ちて鬱念(うつねん)を開発せんか。但(ただ)し兼日(けんじつ)御存知(ごぞんじ)有りと雖(いえど)も、駿馬(しゅんめ)にも鞭(むち)うつの理(ことわり)之有り。今日の御出仕(ごしゅっし)公庭に望みての後は 設(たと)ひ知音(ちいん)たりと雖も、傍輩(ほうばい)に向かひて雑言(ぞうごん)を止めらるべし。両方 召し合はせの時、御奉行人(ごぶぎょうにん)、訴陳の状 之を読むの剋(きざ)み、何事に付けても御奉行人御尋(おたず)ね無からんの外(ほか)は一言(いちごん)をも出(い)だすべからざるか。設ひ敵人 等 悪口(あっく)を吐(は)くと雖も、各々 当身の事 一(ひと)・二度(ふたたび)までは聞かざるが如くすべし。三度(みたび)に及ぶの時、顔貌(げんみょう)を変ぜず、麁言(そごん)を出(い)ださず。軟語(なんご)を以(もっ)て申すべし。
 各々は一処の同輩なり。私(わたくし)に於(おい)ては全く違恨(いこん)無きの由 之を申さるべきか。又 御供(おんとも)の雑人 等に能(よ)く能く禁止を加へ、喧嘩(けんか)を出(い)だすべからざるか。是(か)くの如きの事 書札(しょさつ)に尽くし難(がた)し、心を以て御斟酌(ごしんしゃく)有るべきか。
 此等(これら)の嬌言(きょうげん)を出(い)だす事 恐れを存ずと雖も、仏経と行者と檀那と三事相応(そうおう)して一事を成(じょう)ぜんが為(ため)に愚言を出(い)だす処なり。恐々謹言。
(平成新編0417・御書全集0178・正宗聖典----・昭和新定[1]0630~0631・昭和定本[1]0439)
[文永06(1269)年05月09日(佐前)]
[真跡・中山法華経寺(100%現存)]
[※sasameyuki※]