抑(そもそも)仏 何の因縁を以(もっ)て十界の衆生 悉(ことごと)く 三因仏性 有りと説きたま(給)ふや。天親菩薩(てんじんぼさつ)の仏性論 縁起分(えんぎぶん)の第一に云(い)はく「如来 五種の過失を除(のぞ)き、五種の功徳を生(しょう)ずるが為(ため)の故(ゆえ)に、一切衆生 悉有仏性(しつうぶっしょう)と説きたまふ。謂(い)はく、五種の過失とは、一(ひとつ)には下劣心(げれつしん)、二(ふたつ)には高慢心、三(みっつ)には虚妄執(こもう しゅう)、四(よっつ)には真法(しんぽう)を謗(ぼう)じ、五(いつつ)には我執(がしゅう)を起こす。五種の功徳とは、一には正勤(しょうごん)、二には恭敬(くぎょう)、三には般若(はんにゃ)、四には闍那(じゃな)、五には大悲なり。生ずること無しと疑ふが故に菩提心(ぼだいしん)を発(お)こすこと能(あた)はざるを下劣心と名づけ、我(われ)に性(しょう)有って能(よ)く菩提心を発こすと謂(おも)へるを高慢と名づけ、一切の法 無我の中に於(おい)て有我(うが)の執(しゅう)を作(な)すを虚妄執と名づけ、一切諸法の清浄(しょうじょう)の智慧功徳を違謗(いぼう)するを謗真法(ぼう しんぽう)と名づけ、意(こころ)唯(ただ)己(おのれ)を存して一切衆生を憐(あわ)れむことを欲(ほっ)せざるを起我執(き がしゅう)と名づく。此(こ)の五(いつつ)に翻対(ほんたい)して定(さだ)めて性(しょう)有りと知りて菩提心を発(お)こす」と。
(平成新編0182~0183・御書全集0426・正宗聖典ーーーー・昭和新定[1]0305・昭和定本[1]0147)
[正元01(1259)年(佐前)]
[真跡・身延曾存]
[※sasameyuki※]