御布施(ご ふせ)御馬一疋(いっぴき)鹿毛 御見参(ご げざん)に入(い)らしめ候(そうら)ひ了(おわ)んぬ。
兼(か)ねて 又 此(こ)の経文は廿八字(にじゅうはちじ)、法華経の七の巻(まき)薬王品(やくおうほん)の文(もん)にて候(そうろう)[細雪注・「此經則為(しきょうそくい)。閻浮提人(えんぶだいにん)。病之良薬(びょうしろうやく)。若人有病(にゃくにんうびょう)。得聞是經(とくもんぜきょう)。病即消滅(びょうそくしょうめつ)。不老不死(ふろうふし)」の御経文のこと]。然(しか)るに聖人(しょうにん)の御乳母の、ひとゝせ(一年)御所労 御大事にならせ給(たま)ひ候て、やがて死なせ給ひて候(そうら)ひし時、此の経文を あそばし候(そうろう)て、浄水を もっ(以)て まい(進)らさせ給ひて候(そうら)ひしかば、時を かへず い(生)きかへ(返)らせ給ひて候(そうろう)経文なり。なんでうの(南条)七郎次郎時光は身はちい(小)さきものなれども、日蓮に御こゝろざし ふか(深)きものなり。たと(設)い定業(じょうごう)なりとも今度(このたび)ばかり えんまわう(閻魔王)たす(助)けさせ給へと御せいぐわん(誓願)候。明日 寅卯辰(とら う たつ)の刻(こく)に しやうじがは(精進河)の水 と(取)りよ(寄)せさせ給ひ候て、この きやうもん(経文)を はい(灰)に や(焼)きて、水 一合(いちごう)に入(い)れまいらせ候て まいらせさせ給ふべく候。恐々謹言。
(平成新編1589~1590・御書全集----・正宗聖典----・昭和新定[3]2276・昭和定本[2]1909~1910)
[弘安05(1282)年02月25日(佐後)]
[真跡(日朗代筆)・富士大石寺(100%現存)]
[※sasameyuki※]