『法蓮抄(烏竜遺竜御書)』(佐後)[曾存] | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

今の法華経の文字は皆生身(しょうじん)の仏なり。我等(われら)は肉眼(にくげん)なれば文字と見るなり。たと(譬)へば餓鬼は恒河(ごうが)を火と見る、人は水と見、天人は甘露(かんろ)と見る。水は一なれども果報にしたが(随)て見るところ各別(かくべつ)なり。此(こ)の法華経の文字は盲目の者は之(これ)を見ず、肉眼は黒色と見る。二乗は虚空と見、菩薩は種々の色と見、仏種(ぶっしゅ)純熟せる人は仏と見奉(みたてまつ)る。されば経文に云(い)はく「若(も)し能(よ)く持(たも)つこと有(あ)らば即(すなわ)ち仏身(ぶっしん)を持つなり」等云云。天台の云はく「稽首(けいしゅ)妙法蓮華経、一帙(ちつ)八軸四七品(ししちほん)、六万九千三八四、一々文々是(これ)真仏(しんぶつ)、真仏説法利衆生」等と書かれて候(そうろう)。之を以(もっ)て之を案(あん)ずるに、法蓮法師(ほうれんほっし)は毎朝口(くち)より金色(こんじき)の文字を出現す。此の文字の数は五百十字なり。一々の文字変(へん)じて日輪(にちりん)となり、日輪変じて釈迦如来となり、大光明(だいこうみょう)を放(はな)って大地をつ(突)きとを(通)し、三悪道(さんなくどう)無間大城(むけんたいじょう)を照(て)らし、乃至(ないし)東西南北、上方に向かっては非想非非想へものぼ(上)り、いかなる処(ところ)にも過去聖霊(しょうりょう)のおはすらん処まで尋(たず)ね行き給(たま)ひて、彼(か)の聖霊に語り給ふらん。我(われ)をば誰とか思(おぼ)し食(め)す。我は是汝(なんじ)が子息(しそく)法蓮が毎朝誦(じゅ)する所の法華経の自我偈の文字なり。此の文字は汝が眼(まなこ)とならん、耳とならん、足とならん、手とならんとこそ、ねんご(懇)ろに語(かた)らせ給ふらめ。其(そ)の時過去聖霊は我が子息法蓮は子にはあら(非)ず善知識なりとて、娑婆世界(しゃばせかい)に向かっておが(拝)ませ給ふらん。是(これ)こそ実の孝養(こうよう)にて候なれ。
(平成新編0819~0820・御書全集1050~1051・正宗聖典ーーーー・昭和新定[2]1205~1206・昭和定本[1]0950~0951)
[建治01(1275)年04月(佐後)]
[真跡・京都本圀寺外三ヶ所(10%未満現存) 身延曾存]
[※sasameyuki※]