『法華題目抄(法華経題目抄)』(佐前)[真跡(断片)・古写本] | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 女人をば内外典に是(これ)をそしり、三皇五帝の三墳五典にも諂曲(てんごく)者と定む。されば災(わざわ)ひは三女より起こると云へり。国の亡び人の損ずる源は女人を本とす。内典の中には初成道の大法たる華厳経には「女人は地獄の使ひなり。能(よ)く仏の種子を断つ。外面は菩薩に似て内心は夜叉(やしゃ)の如し」文。双林最後の大涅槃経には「一切の江河必ず回曲(えごく)有り。一切の女人必ず諂曲有り」文。又云はく「所有(あらゆる)三千界の男子の諸の煩悩合集して一人の女人の業障と為(な)る」等云云。大華厳経の文に「能断仏種子」と説かれて候は、女人は仏になるべき種子をい(焦)れり。譬へば大旱魃(だいかんばつ)の時、虚空の中に大雲をこり大雨を大地に下すに、かれたるが如くなる無量無辺の草木花さき菓なる。然(しか)りと雖(いえど)もい(焦)りたる種はを(生)ひずして、結句雨しげければく(朽)ちう(失)するが如し。仏は大雲の如く、説教は大雨の如く、か(枯)れたるが如くなる草木を一切衆生に譬へたり。仏教の雨に潤(うるお)ひて五戒・十善・禅定等の功徳を得るは花さき菓なるが如し。雨ふれども、いりたる種のをひずして、かへりてく(朽)ちう(失)するは、女人の仏教に遇(あ)へども、生死をはなれずして、かへりて仏法を失ひ、悪道に堕つるに譬ふ。是(これ)を「能断仏種子」とは申すなり。涅槃経の文に、一切の江河のまがれるが如く、女人も又まがれりと説かれたるは、水はやわらかなる物なれば、石山なんどのこわき物にさ(障)へられて水のさきひるむゆへに、かしここゝへ行くなり。女人も亦(また)是(か)くの如し。女人の心をば水に譬へたり。心よわくして水の如くなり。道理と思ふ事も男のこわき心に値(あ)ひぬればせ(塞)かれてよしなき方へをもむ(趣)く。又水にゑが(画)くにとゞ(留)まらざるが如し。女人は不信を体とするゆへに、只今さあるべしと見る事も、又しばらくあればあらぬさまになるなり。仏と申すは正直を本とす。故にまがれる女人は仏になるべきにあらず。五障三従と申して五つのさはり三つしたがふ事あり。されば銀色女(ごんじきにょ)経には「三世の諸仏の眼は大地に落つとも、女人は仏になるべからず」と説かれ、大論には「清風はとると云ふとも女人の心はとりがたし」と云へり。此(か)くの如く諸経に嫌はれたりし女人を文殊師利菩薩(もんじゅしりぼさつ)の妙の一字を説き給ひしかば、忽(たちま)ちに仏になりき。あまりに不審なりし故に、宝浄世界の多宝仏の第一の弟子智積菩薩(ちしゃくぼさつ)・釈迦如来の御弟子の智慧第一の舎利弗尊者、四十余年の大小乗経の意をもって竜女の仏になるまじき由を難ぜしかども、終(つい)に叶はずして仏になりにき。初成道の「能断仏種子」も双林最後の「一切江河必有回曲(ひつうえごく)」の文も破れぬ。銀色女経並びに大論の亀鏡(ききょう)も空しくなりぬ。又智積・舎利弗は舌を巻き口を閉ぢ、人天大会(にんでんだいえ)は歓喜のあまりに掌(たなごころ)を合はせたりき。是(これ)偏(ひとえ)に妙の一字の徳なり。此の南閻浮提の内に二千五百の河あり。一々に皆まがれり。南閻浮提の女人、心のまがれるが如し。但し娑婆耶(しゃばや)と申す河あり。縄を引きは(延)えたるが如くして直ちに西海に入る。法華経を信ずる女人も亦復(またまた)是(か)くの如く、直ちに西方浄土へ入るべし。是(これ)妙の一字の徳なり。
(平成新編0359~0360・御書全集0945~0947・正宗聖典ーーーー・昭和新定[1]0542~0545・昭和定本[1]0400~0402)
[文永03(1266)年01月06日(佐前)]
[真跡・水戸久唱寺他十一ヶ所(10%以上40%未満現存)、古写本・日目筆 宮城一迫妙教寺]
[※sasameyuki※]