銅の御器(ごき)二つ給(た)び畢(おわ)んぬ。
釈迦仏三十の御年、仏になり始(そ)めてをはし候時、牧牛(もくご)女と申せし女人、乳のかい(粥)をに(煮)て仏にまいらせんとし候ひし程に、いれてまいらすべき器(うつわ)なし。毘沙門天王等の四天王、四鉢(はち)を仏にまいらせたりし、其の鉢をうちかさねてかい(粥)をまいらせしに仏にはならせ給ふ。其の鉢、後には人もも(盛)らざりしかども、常に飯(いい)のみ(満)ちしなり。後に馬鳴菩薩(めみょうぼさつ)と申せし菩薩、伝へて金銭三貫にほう(報)じたりしなり。今御器二つを千里にをくり、釈迦仏にまいらせ給へば、かの福のごとくなるべし。委(くわ)しくは申さず候。
(平成新編1180・御書全集1097・正宗聖典----・昭和新定[2]1736・昭和定本[2]1398~1399)
[建治03(1277)年11月07日(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]