弁(べん)の房の便宜(びんぎ)に三百文、今度二百文給び了んぬ。仏は真に尊くして物によらず。昔の得勝童子は沙(いさご)の餅(もちい)を仏に供養し奉りて、阿育大王と生まれて一閻浮提の主たりき。貧女の我がかしら(頭)をおろ(剃)して油と成せしが、須弥山(しゅみせん)を吹きぬきし風も此の火をけ(消)さず。されば此の二三の鵞目は、日本国を知る人の国を寄せ、七宝(しっぽう)の塔を■(=情-青+刀)利天(とうりてん)にくみあげたらんにもすぐ(勝)るべし。法華経の一字は大地の如し、万物を出生す。一字は大海の如し、衆流を納む。一字は日月の如し、四天下をてらす。此の一字返じて月となる、月変じて仏となる、稲は変じて苗となる、苗は変じて草となる、草変じて米となる、米変じて人となる、人変じて仏となる、女人変じて妙の一字となる、妙の一字変じて台上の釈迦仏となるべし。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。恐々謹言。
(平成新編1545~1546・御書全集1263・正宗聖典----・昭和新定[3]2218~2219・昭和定本[2]1853)
[弘安03(1280)年(佐後)]
[真跡・京都妙覚寺(10%未満現存)]
[※sasameyuki※]