『生死一大事血脈抄(祕訣血脈抄)』(佐後) | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

過去に法華経の結縁強盛なる故に現在に此の経を受持す、未来に仏果を成就せん事疑ひ有るべからず。過去の生死・現在の生死・未来の生死、三世の生死に法華経を離れ切れざるを法華の血脈相承とは云ふなり。謗法不信の者は「即断一切世間仏種(そくだんいっさいせけんぶっしゅ)」とて、仏に成るべき種子を断絶するが故に、生死一大事の血脈之(これ)無きなり。
 総じて日蓮が弟子檀那等自他彼此(じたひし)の心なく、水魚の思ひを成して異体同心にして南無妙法蓮華経と唱へ奉る処を、生死一大事の血脈とは云ふなり。然も今日蓮が弘通する処の所詮是なり。若し然らば広宣流布の大願も叶ふべき者か。剰(あまつさ)へ日蓮が弟子の中に異体異心の者之有れば、例せば城者として城を破るが如し。日本国の一切衆生に法華経を信ぜしめて仏に成る血脈を継がしめんとするに、還って日蓮を種々の難に合はせ、結句(けっく)此の島まで流罪す。而るに貴辺日蓮に随順し又難に値ひ給ふ事、心中思ひ遣(や)られて痛ましく候ぞ。金(こがね)は大火にも焼けず大水にも漂はず朽(く)ちず、鉄(くろがね)は水火共に堪へず。賢人は金の如く愚人は鉄の如し、貴辺豈真金に非ずや。法華経の金を持つ故か。経に云はく「衆山の中に須弥山為(こ)れ第一、此の法華経も亦復是くの如し」と。又云はく「火も焼くこと能(あた)はず水も漂はすこと能はず」云云。過去の宿縁追ひ来たって今度日蓮が弟子と成り給ふか。釈迦多宝こそ御存知候らめ。「在々諸仏土常与師倶生(ざいざいしょぶつどじょうよしぐしょう)」よも虚事(そらごと)候はじ。
(平成新編0514・御書全集1337~1338・正宗聖典1023・昭和新定[1]0744~0745・昭和定本[1]0523~0524)
[文永09(1272)年02月11日(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]