『十八円満抄』(佐後)(秘) | 細雪の物置小屋

細雪の物置小屋

御宗祖御開山遺文DBを中心に投稿します。
[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

問うて云はく、末法に於ける流布の法の名目如何。答へて云はく、日蓮が己心に相承せる秘法を此の答へに顕はすべきなり。所謂(いわゆる)南無妙法蓮華経是なり。問うて云はく、証文如何。答へて云はく、神力品に云はく「爾(そ)の時仏上行等の菩薩に告げたまはく、要を以て之を言はゞ乃至宣示顕説す」云云。天台大師云はく「爾時仏告上行より下は第三結要付嘱(けっちょうふぞく)なり」と。又云はく「経中の要説・要は四事に在り」と。「総じて一経を結するに唯四ならくのみ。其の枢柄(すうへい)を撮(と)って之を授与す」と。問うて云はく、今の文は上行菩薩等に授与するの文なり。汝何が故ぞ己心相承の秘法と云ふや。答へて云はく、上行菩薩の弘通し給ふべき秘法を日蓮先立ちて之を弘む。身に当たるの意に非ずや。上行菩薩の代官の一分なり。所詮末法に入っては天真独朗の法門無益なり。助行には用ふべきなり。正行には唯南無妙法蓮華経なり。伝教大師云はく「天台大師は釈迦に信順して法華宗を助けて震旦(しんだん)に敷揚(ふよう)し、叡山の一家は天台に相承して法華宗を助けて日本に弘通す」と。今日蓮は塔中相承の南無妙法蓮華経の七字を末法の時、日本国に弘通す。是豈(あに)時国相応の仏法に非ずや。末法に入って天真独朗の法を弘めて正行と為さん者は、必ず無間大城に堕ちんこと疑ひ無し。貴辺年来の権宗を捨てゝ日蓮が弟子と成り給ふ。真実、時国相応の智人なり。総じて予が弟子等は我が如く正理を修行し給へ。智者・学匠の身と為りても地獄に堕ちて何の詮か有るべき。所詮時々念々に南無妙法蓮華経と唱ふべし。上に挙ぐる所の法門は御存知たりと雖も書き進らせ候なり。十八円満等の法門能々案じ給ふべし。並びに当体蓮華の相承等、日蓮が己証の法門等、前々に書き進らせしが如し。委しくは修禅寺相伝日記の如し。天台宗の奥義之に過ぐべからざるか。一心三観・一念三千の極理(ごくり)は妙法蓮華経の一言を出でず。敢(あ)へて忘失すること勿れ、敢へて忘失すること勿れ。伝教大師云はく「和尚慈悲有って一心三観を一言に伝ふ」と。玄旨伝に云はく「一言の妙旨なり一教の玄義なり」云云。寿量品に云はく「毎(つね)に自ら是の念を作なく、何を以てか衆生をして無上道に入り、速(すみ)やかに仏身を成就することを得せしめんと」云云。毎自作是念の念とは、一念三千生仏(しょうぶつ)本有の一念なり。秘すべし秘すべし。恐々謹言。
(平成新編1518~1519・御書全集1367~1368・正宗聖典1022・昭和新定[3]2180~2182・昭和定本[3]2143~2144)
[弘安03(1280)年11月03日(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[秘・日蓮が己証の法門等]
[※sasameyuki※]