『秋元御書(筒御器抄)』(佐後) | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

 天台山に竜門と申す所あり。其の滝百丈なり。春の始めに魚集まりて此の滝へ登るに、百千に一つも登る魚は竜と成る。此の滝の早き事矢にも過ぎ、電光にも過ぎたり。登りがたき上に、春の始めに此の滝に漁父集まりて魚を取る網を懸(か)くる事百千重、或は射て取り、或は酌(く)んで取る。鷲(わし)・■(=雕-隹+鳥)(くまたか)・鴟(とび)・梟(ふくろう)・虎・狼・犬・狐集まりて昼夜に取り■(=喰-食+敢)(くら)ふなり。十年二十年に一つも竜となる魚なし。例せば凡下の者の昇殿を望み、下女が后(きさき)と成らんとするが如し。法華経を信ずる事、此にも過ぎて候と思し食せ。常に仏禁(いまし)めて言はく、何なる持戒智慧高く御坐(おわ)して、一切経並びに法華経を進退せる人なりとも、法華経の敵(かたき)を見て、責め罵(の)り国主にも申さず、人を恐れて黙止(もだ)するならば、必ず無間大城に堕(お)つべし。譬へば我は謀叛を発(お)こさねども、謀叛の者を知りて国主にも申さねば、与同罪は彼の謀叛の者の如し。南岳大師の云はく「法華経の讐(あだ)を見て呵責せざる者は謗法の者なり、無間地獄の上に堕ちん」と。見て申さぬ大智者は、無間の底に堕ちて彼の地獄の有らん限りは出づるべからず。日蓮此の禁めを恐るゝ故に、国中を責めて候程に、一度ならず流罪死罪に及びぬ。今は罪も消え過(とが)も脱れなんと思ひて、鎌倉を去りて此の山に入って七年なり。
(平成新編1453・御書全集1077・正宗聖典----・昭和新定[3]2085・昭和定本[2]1738~1739)
[弘安03(1280)年01月27日(佐後)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]