『顕仏未来記』(佐後)[曾存・古写本] | 細雪の物置小屋

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[参考]『日蓮大聖人の「御書」をよむ 上 法門編』著者・小林正博
発行所・株式会社第三文明社
『日蓮大聖人の「御書」をよむ 下 御消息編』著者・河合 一
発行所・株式会社第三文明社

問うて曰く、仏記既に此くの如し、汝が未来記は如何。答へて曰く、仏記に順じて之を勘ふるに既に後五百歳の始めに相当たれり。仏法必ず東土(とうど)の日本より出づべきなり。其の前相必ず正像に超過せる天変地夭(ちよう)之有るか。所謂仏生の時、転法輪の時、入涅槃の時、吉瑞凶瑞共に前後に絶えたる大瑞なり。仏は此聖人の本なり。経々の文を見るに、仏の御誕生の時は五色の光気四方に遍くして夜も昼の如し。仏御入滅の時には十二の白虹南北に亘(わた)り、大日輪光り無くして闇夜の如くなりし。其の後正像二千年の間、内外の聖人生滅有れども此の大瑞には如(し)かず。而るに去ぬる正嘉年中より今年に至るまで、或は大地震、或は大天変、宛(あたか)も仏陀の生滅の時の如し。当に知るべし、仏の如き聖人生まれたまはんか、滅したまはんか。大虚(おおぞら)に亘って大彗星出づ、誰の王臣を以て之に対せん。大地を傾動して三たび振裂(しんれつ)す、何れの聖賢を以て之を課(おお)せん。当に知るべし、通途(つうず)の世間の吉凶の大瑞に非ざるべし。惟(こ)れ偏に此の大法興廃の大瑞なり。天台云はく「雨の猛きを見て竜の大なるを知り、華の盛んなるを見て池の深きを知る」等云云。妙楽云はく「智人は起を知り蛇は自ら蛇を識(し)る」等云云。日蓮此の道理を存じて既に二十一年なり。日来(ひごろ)の災、月来(つきごろ)の難、此の両三年の間の事、既に死罪に及ばんとす。今年今月万が一も身命を脱れ難きなり。世の人疑ひ有らば委細の事は弟子に之を問へ。幸ひなるかな一生の内に無始の謗法を消滅せんことよ、悦ばしいかな未だ見聞せざる教主釈尊に侍(つか)へ奉らんことよ。願はくは我を損ずる国主等をば最初に之を導かん。我を扶(たす)くる弟子等をば釈尊に之を申さん。我を生める父母等には未だ死せざる已前に此の大善を進(まい)らせん。但し今夢の如く宝塔品の心を得たり。此の経に云はく「若し須弥を接(と)って他方無数の仏土に擲(な)げ置かんも亦未だ難しと為(せ)ず。乃至若し仏の滅後に悪世の中に於て能く此の経を説かん、是則ち難しと為す」等云云。伝教大師云はく「浅きは易く深きは難しとは釈迦の所判なり、浅きを去って深きに就(つ)くは丈夫の心なり。天台大師は釈迦に信順し法華宗を助けて震旦(しんだん)に敷揚(ふよう)し、叡山の一家(け)は天台に相承し法華宗を助けて日本に弘通す」等云云。安州(あんしゅう)の日蓮は恐らくは三師に相承し法華宗を助けて末法に流通せん。三に一を加へて三国四師と号(な)づく。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。
(平成新編0678~0679・御書全集0508~0509・正宗聖典1004~1005・昭和新定[2]0998~0999・昭和定本[1]0741~0743)
[文永10(1273)年閏05月11日(佐後)]
[真跡・身延曾存、古写本・日進筆 身延久遠寺]
[※sasameyuki※]