但し御不審の事、法華経は何れの品も先に申しつる様に愚かならねども、殊に二十八品の中に勝れてめでたきは方便品と寿量品にて侍り。余品は皆枝葉にて候なり。されば常の御所作には、方便品の長行と寿量品の長行とを習ひ読ませ給ひ候へ。又別に書き出だしてもあそばし候べく候。余の二十六品は身に影の随ひ、玉に財の備はるが如し。寿量品・方便品をよみ候へば、自然に余品はよみ候はねども備はり候なり。薬王品・提婆品は女人の成仏往生を説かれて候品にては候へども、提婆品は方便品の枝葉、薬王品は方便品と寿量品の枝葉にて候。されば常には此の方便品・寿量品の二品をあそばし候ひて、余の品をば時々御いとまのひまにあそばすべく候。
(平成新編0303・御書全集1201~1202・正宗聖典1013・昭和新定[1]0473~0474・昭和定本[1]0290~0291)
[文永01(1264)年04月17日(佐前)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]