家の前に

電力会社の車。

「近々…」と挨拶に来られたのは

ひと月くらい前、かな。

入り口の電信柱に

カラスが巣を作り始めていた。

通報があったのか

現状調査に来られた。

せっせと枝をくわえてくるカラス。

一途な姿を目で追いながら

ひそかに見守っていた。

「撤去に伺います。」

その言葉がやけに冷たく感じた。

電信柱。

針金運び込んでいるかも知れないので

危険性もある。

その知識と

あの姿の調律が合わない気持ちだった。

音沙汰がないまま過ぎて

どうやら巣は完成したらしい。

そして

小さな家族が増えたのか

エサを運び

敵を威嚇する親カラスになった。

散歩をするうちの猫は

大敵と見なされて怒鳴られてしまう。

その度に外に飛び出し

連れ帰っていた。

家族を守りたいカラスと

家族を守るわたし。

憎くはないけど憎たらしく思ってしまう。

調律が合わない。

猫に危害を加えるかどうかは分からないが

気が気でない日が続いていた。

覚えて頂いていたようで

今日の撤去。

安心…しているはずなに

巣があった場所に

カラスがとまっているのを見るのは辛かった。

カラスも猫も

自然のまま生きている。

人間の都合で手を加えるあれこれに

複雑な一日だった。

調律が合わないこともまた

自然なのだろうか。