小説『勇者には勝てない』で、第18回電撃小説大賞銀賞を受賞した、来田志郎先生へのインタビューを掲載する. 『勇者には勝てない』は、現代日本に人間として転生した魔王の手先・三魔将が繰り広げるコメディ作品. 転生前の記憶は持ちつつも、倫理観などを含めてごく一般的な男子高校生として育った3人だったが、彼らの前に勇者の証である"光の波動"を持った転校生が現れる. 菅田香澄と名乗るその温和な少女は、なんと勇者の記憶を失っているらしく、3人はほっと胸をなで下ろす. しかしそんな彼らの前に、魔王が持つ"闇の波動"の気配が迫る――というストーリーだ. そんな本作を手掛けた来田志郎先生にインタビューを行った. 作品が生まれた経緯などをはじめ、さまざまな質問をぶつけてきたので、ぜひご覧いただきたい. 来田志郎先生 天啓に導かれたようにタイトルが決まった ――作品を書き始めることになったキッカケから教えてもらってもいいですか? 電撃小説大賞の第17回にも応募して選評をいただいたんですが、そこに「会話がよかった」と書かれていたんです. なので、次に送るものは会話を重視した、明るく楽しいものにしようというところからスタートしました. ――第17回の応募作はどのような作品だったんですか? 誰もいない街でサバイバルをするような、シリアスな作品です. ――電撃大賞以外に応募した賞などはあるんですか? ありません. 他の賞に送る作品があったら、電撃大賞に送ろうと考えるぐらい、電撃大賞だけを考えていました. ――どうしてそこまで電撃大賞にこだわっていたんですか? やはり一番"どんな作品でも受け入れてもらえる"というところがよかったからです. 他の賞だと作品の傾向があるようで、僕はそういう傾向を重視した作品を書けるか自信がなかったんです. 電撃文庫だったらなんでもありなので、多少外れていても大丈夫かなと思いました. ――応募作品数も多い賞ですが、そのあたりを意識したりはしましたか? 実は、応募作品数が格別に多い賞だと知ったのは、応募した後だったんです. 竹槍で突っ込んでいったんだなぁ... と思いましたね. ――第17回に応募した後も応募作品数をあまり気にしなかったということですよね? そうですね. あまり知識を取り入れないようにしていたのは、流行などをしっかり分析したうえでそれを意識して書いても、他の応募者の方々と同じ土俵で勝負することになって、それではとてもかなわないだろうと思っていたからなんです. なので、あまり詳しくない状態でやってみた方がかえってなんとかなるんじゃないかなあと. 今思うと怖いもの知らずでしたね. ――選評に「もはや"勇者と魔王"モノはジャンルの1種」と書かれていましたが、もしかするとそのジャンル被りなどもあまり気にはされていなかったのでしょうか... ? 実は、勇者と魔王モノの作品がそんなにたくさんあることは知らなかったんです. だから物語を考えついた時はこれは斬新だと... . 勇者と魔王を題材に選んだのには、いろいろと理由があるんです. まず、自分が好きなものじゃないと明るく楽しい話にできないと思って、最初は歴史モノにしようと考えました. 大学で歴史を学んでいたのでその経験を生かせるような、歴史上の人物が現代にタイムスリップしてくる話にしようと思ったんです. ただ、17回の選評シートに、「スタートダッシュが遅い」というのがあって... . 歴史上の人物を題材にすると、その人物の説明を入れなきゃいけなくなってしまうので、スタートダッシュができない. じゃあ勇者と魔王だったら特に説明も必要がないと考えたんです. この作品は、勇者が魔王に剣を突き付けるところから始まるんですが、説明をしなくてもそれだけで2人の関係性がわかるんじゃないかと. ――確かに勇者と魔王だったら、敵対関係にあることがすぐわかりますね. 勇者と魔王が題材だったら、主役は勇者か魔王になるかと思うのですが、そこをあえてズラして手下にしたのにはどんな狙いがあるんですか? 歴史の次に好きなものが、ゲームに出てくる"中ボス"で、題材としては"勇者と魔王"よりも先に"中ボス"があったんです. でも中ボスは、主役に倒されなきゃいけないわけですから明るく楽しい話にはとてもならないなと思いました. ただ、これを最初の、"歴史上の人物がタイムスリップしてくる"というアイデアと組み合わせたらどうかなと考えていた時に、『勇者には勝てない』というタイトルを思いつきまして. そこから話を逆に考えていきました. ――モデルになった中ボスなどはいるんですか? たくさんいるんですが、一例を挙げると『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』のアトラスとかバズズでしょうか. あと、『ファイナルファンタジーXI』が好きなんですが、あのゲームの中に出てくる名前付きの敵って、どんな小さな敵にもものすごく細かな設定があるんです. そういうところからも"典型的な中ボス像"をひねり出していきました. ――タイトルを最初から決めて書かれたということですが、これはパッと思いついたんですか? そうです. ジョーダン シューズ 天啓のような感じでした. 話は全然思いついていなかったんですが、このタイトルが浮かんだ時は「勝ったな! 」と思いました(笑). ――ラストシーンも印象的ですが、それもタイトルから来ているのでしょうか. そうですね. あのセリフを言わせたいと思って書き出しました. →死ぬかもしれないと思って小説を書き出した(2ページ目へ).