私は特別支援の免許ももっていない、ただ比較的多めにASDやADHD(診断済み)のお子さんを受け持ったり、自分の知見から何らかのLD要素をもつお子さん達を受け持ってきただけの経験値しかない身分です。

 なので参考までに、のお話なんですけど。

 就学前に「うちの子、問題行動が多い?」と思うことがありますよね。

 幼稚園&保育園に通っていると、持ち物管理は保護者の方や施設側で行っているので、「忘れっぽい」とかいう面は見られにくいと思いますが、ADHD要素だと典型的なのは「多動・衝動性(他害や自傷、汚言、感覚過敏など)」が見られることがあります。

 また、ASD要素では「協調性がない・パニックを起こす(ADHD特性も含まれている)・やけに大人しい・頑固・こだわりが強い」といった面が見られます。

 LDは字形に関わる要素(枠からはみ出して字を書く・本や書かれている文字が読み取れない)や数的要素(数字がカウントできない・数量を認識していないなど)という面が見られますが、これは小学校に入ってみないとわからなかったりしますが、言語(話し方が就学前にしても幼すぎる・語彙が少ない・文章にして表現できない)といったところから知的障害(LD)を疑うことがあります。

 また、アスペルガー症候群(厳密にいうと、現在はASDに含まれます。自閉症、高機能自閉症もひっくるめてASDです。誤用ではありますが、「アスペっぽい」という言葉が現代で浸透しているので、あえて分けます。)(相手の気持ちを思いやれない・何度も嫌がらせをするけど悪気がない・自分本位など)といったものもあり、複数要素をもつことで広汎性発達障害とか呼ばれたりもします。

 私は「全人類発達障害説」をもっており、完璧超人はほぼいないと思っています。多少なりとも、忘れっぽいところがあったり、ミスしやすかったり、何らかの教科に苦手意識をもっていたり、手先や全身運動が苦手だったり、他人を怒らせてしまいがちだったり、距離感がわからなかったり・・・。

 そうした問題は、社会生活(学校生活)を通して、いろいろな人がいて、いろいろなトラブルを経て、経験していくことで「こうした方がいいんだな。」と察して成長することにより、大人になってから障害特性が薄くなっていくものだと思います。

 私みたいに、大人になってから発達障害に気づく(社会生活を営み、多様な立場の人たちと接したり、マルチタスクな日本社会の仕事を体験することによって)こともあります。その場合、ウェイスという心理検査(2時間くらいで、ブロックを指定された通りに組み合わせたり、様々な単語を分かりやすく説明させられたり、逆さまに言葉を言わせられたりなんだり。実施している間の態度も心理検査の対象になっています。)を行って、IQと、どういったところが得意か苦手かをグラフ化し、そのグラフの折れ具合が大きければ大きいほど発達障害度合いが強いことを示します。

 もちろんテストのようなものですから、再度テストを受けたら、また違う数値が出ることもあるでしょうが。でも、障害特性は脳の機能の問題なので、数値が変わるだけで傾向としては大きく変化することはあまりないのかなと思います。

 ですが、子供は違います。厳密にいえば大人もでしょうが、「何が得意で何が不得意か」を、子供はウィスクなどといった検査(2年間隔で再検査可能)を受けることで把握し、把握した後は適切な療育を受けることによって、成長(脳を変容させる)ことが多少可能だと思います。

 もちろん、発達障害というのは遺伝や生まれつきの脳の特性、生育歴によって確立するものですので、病気とは異なって完治するようなものではありませんが、子供はスポンジのように脳が柔らかく吸収しやすい、成長の幅が異なる存在です。

 保護者の方も「なんでこんなことばかりするんだ!」と思うような憤りも、「ああ、そういう事情があったんだ・・・。本人にとって、どうしようにもできない問題だったんだ。」と腑に落ちることができます。

 で、冒頭の就学前の問題行動について話を戻しますが、就学前が一番療育を受けるまでに土台作りをしやすいタイミングだと思います。

 自費にはなりますが、児童精神科で検査して、お子さんの特性を知ることができます。

 お金はかかる(といっても、お子さんの将来のためを思えば数千円、というレベルだと思います。)というデメリットはあれど、入学前にわかっていれば、支援級を選択肢に入れることができると思います。

 もちろん、通常級にいるお子さん達のことを思うと、「どうして我が子が・・・。」という落胆もあるかと思いますが、通常級にも大勢の発達障害予備軍のお子さんはいます。発達障害以外にも、繊細さんなお子さんだったり、アレルギーに悩んだり、といったお子さんも多くいます。

 そういった子を分けて特別な支援を個別に手厚くできる環境はありません。せいぜい、保健室や職員室登校が関の山。

 繊細なお子さんなんかはちょっとした音なんかにも敏感なので、いつも自分の苦手な音にイライラする生活を送ったり、ちょっとした言動を受けたり、家庭環境の問題だったり、友達や担任と相性が悪かったりなどの問題で不登校になってしまうことも。

 そう考えたら、受け入れ先が整っている(全国の国公立の学校では、八割、特別支援級が設置されるようになってきました。)とも言えるのではないでしょうか。

 もちろん、支援級にいる担任達は、私と同じように特別支援の免許をもたない人もいるし、何なら「時間的余裕があるから」と、小さいお子さんを育てていたり、あんまりやる気のないおばちゃんタイプだったりの先生が集まる可能性もあります。一方で、真摯に特別支援が必要なお子さんと向き合いたいと希望する方もいるのを見てきました。

 私は特別支援に興味をもって日頃指導していましたが(自分自身に発達障害があることを知る前から)、交流級がある場合、何時間目に誰がどこの教室に行って何をするのか、というスケジュールマネジメントをすることが難しいと思い、支援級担任は現時点まで希望したことはありません。

 また、そこまで自分の力に自信がないというのもあります。

 ですが、やはりメリットはあります。最大でも8人という少人数で、支援員もつくという、個別支援に適した環境。

 教材も特別支援向けのものを用意し、聴覚過敏のお子さんは遮音ヘッドホンをつけて学習することも、周囲に厭わず行えます。パーテーション区切られ、視野を限定して集中できる環境づくりなどもできます。

 発達段階に応じた内容の学習になりますので、そういった面では学習環境も手厚いです。担任たちは一人当たりの対応に時間を割くことになりますが、比較的余裕をもって接することもできます。

 SST(社会生活を営む上で必要なスキルのトレーニング)も取り組めます。

 ですので、就学前にわかっていたら、支援級に入る方がおすすめです。

 就学時前検診(入学予定の学校での説明会)で掛け合うことができます。

 昔はダウン症などのお子さんが支援級にいたりしました。今はどんどん発達障害への認知や、研究が進み、重度の発達障害をお持ちのお子さんは支援学校での学びに切り替え、地域によるかもしれませんがバス送迎もあるところも。

 今は社会生活を営むことは可能だろうけれど、そのために訓練が必要なお子さんを育てる場所として、支援級が存在しているのだと考えます。

 支援級に、普通級から編入するには、「このままじゃまずいかも。」と思ってから行動しては遅いです。何故なら、学校を介して各自治体で行っているウィスク検査を受けるのに、半年かかったりします。児童精神科の予約を取るのにも苦労します。それだけニーズがあるということであって、「発達障害に悩んでいるのは特別なことではない。」ということなのです。

 だから、就学前の検査を勧めています。

 ただし、認知機能が低いのは、発達障害の有無に関わらず、就学前のお子さんなら当たり前です。だから、検査結果もはっきりとしたものがでなかったり、主治医の方針によっては「まだ受けなくても良いかと。」と判断されることもあります。


 それに、保護者の方が「うちの子、発達障害なのでは?」と疑っている場合、問題行動に対応しきれない時、やはり児童精神科にかかることは無駄ではないと思います。案外、「ちょっとグレーなところはありますけれど、発達段階に応じた成長をしていますよ。」と診断されることでほっとできるかもしれません。問題行動が表面化しているのであれば、専門家の意見を取り入れて家庭でできる支援を行うと、生きやすくなるかもしれません。


 私の近場での話をすると、夫。自分自身でも「ADHDぽい。」と認識しています。どういった症状があるかというと、「物をどこに置いたかわからなくなる。」「物の管理ができない。」「多動気味で、常に動いていないと落ち着かない。」「家に籠るのが苦手で、頻繁に外出する。」といったところです。


 これは結婚してから、障害特性を察した私の方で、ラベリングした収納場所を作り、日頃から頻繁に使うものはポイポイ収納できるようにカゴを用意したり(ここにはコレ入れてね、と言っても指定した場所に入れていない時は私の方で入れてあげる)。スマホをどこに置いたかよく忘れるので、夫がどこに置いたかチラ見しておく。スマートウォッチや鍵は定位置を作る。頻繁に外出する癖は、逆に上手い方に生かして、引きこもりがちな私のお使いをしてもらう。といったことで、夫の特性を補いつつ、Win-Winな関係を構築しています。正反対だからこそ成り立つ関係かもしれません。


 私の障害特性についても。ASDと心理士の方から診断され、診断書では広汎性発達障害と記載されます(そういうものらしいです。私も衝動性という特性もあるので、一つの発達障害だけを有するというのもあまりないようです。)。


 交友関係を構築と継続することが苦手。誘われたら気乗りはしないけれど、最低限の付き合いはする(冠婚葬祭など)。外に出ることが億劫で、読書や映画、動画鑑賞に過集中する。頑固で、自分に合わないと思うやり方は可能な限り避ける。ストイックなところがあり、ちゃんとしないとという固定観念があって、雑な仕事をきちんとしようと無駄に頑張りすぎる。聴覚過敏があり、人の声質によっては聞いていることを苦痛に感じる。ガールズトークといった結論のない雑談が苦手で、協調できない。そのため、大規模校に赴任し、女性が多く、会議中にガールズトークがっつり出してくる学年を組んで、初めて発達障害に気づき、二次障害を発症しました。最初の二次障害は過敏性腸症候群で、電車に乗ったら「トイレ行けない。どうしよう。お腹下すかも。」という強迫観念に陥り、実際にお腹を下すので、長距離移動やトイレにすぐ行ける環境じゃないと不安になるようになり・・・年々病気が増えて、ひっくるめて「適応障害」となりました。


 ただ、私も夫も障害特性がありますが、夫の場合はADHDな特性を「活動的」「とっかかりが早い」「何事も興味を示してとりあえずやってみるチャレンジ精神」という、逆に良い方面に生かすことができています。私も、こだわりが強いということは仕事にプライドをもってやるということなので、色々な仕事を託されたり、叩き台を作る存在になったり、興味のある分野は勉強するといったことができるという、逆に良いところもあります(それで過労になったところもありますが・・・。)。


 障害特性も、問題行動ばかりが目につきやすいですが、裏を返せば良いところもあるわけですね。今までに受け持ってきた障害特性(診断済み)をもつお子さんも、ADHDのお子さんには活発的な活動に精を出してくれるので、放課後に居残って掃除してもらっていました。ASDのお子さんには授業中に深い意見を発してくれるので、他の子にも良い影響のある学びに繋がりました。特性を理解していれば、「変な子」「乱暴な子」ではなくて、「面白い子」「頼れる子」に変容します。


 ただ、就学前の診断でははっきりと検査結果が出にくいのは確か。保護者の方としてはグレーなお子さんであると認識されている場合、入学後に、発達障害特性が顕著に現れる前からなるべく早い段階で動けるように準備(近隣で心理検査を行っている病院の有無の確認や、お子さんの学習状況、お友達関係トラブルの内容、低学年のうちから汚い言葉を日常的に使っていないか、座って45分間の授業に耐えられているか、異様に忘れっぽいなどのチェック)をしておくと良いと思います。


 まあ、改めて伝えますが、念の為、検査するのは悪いことではないと思います。お子さんの良いところに気づけるチャンスでもありますから。

 正直なところ、やはりお子さん関係トラブル(多動や衝動性があったり、嘘をつきがちだったり、周りのお子さんに対して偉ぶったり)が目立つと(他の問題行動は、他の保護者の方はあまり気にしていません。自分のお子さんに危害が加わるか否かで考えていると思います。)、「◯さん家の子、先生の前では良い顔していますけど放課後では・・・。」なんて噂が出回ったりします。その方が、保護者の方もそうですが、本人も傷つき、生きづらさを感じていくようになると思います。

 ですので、療育は大切なことだと常々思っています。私も、療育を受けたかったと、今になって思います。赤ちゃんの頃から夜泣きせず、協調性が乏しくて基本一人で読書していて(寄ってくる友達がいれば相手しますが)、男の子との粗野な遊びに興じ(プロレスとか)、正義感というか自分の価値観に合わない人をとことん攻撃(ADHD要素のある他害系のお子さんに蹴りを喰らわせていた)したりといった問題行動が見られていたものの、苦手教科はあっても算数以外は平均点以上。持ち物管理なども自分で行い、自立している。甘え下手。などという言動で、「たま〜に問題は起こすけれど、まあ自立している責任感が強い子で手がかからない。」みたいに誤解されてしまいました。

 あの時、今くらいに発達障害への対策が進んでいたらと後悔しかありません。

 なので、私と同じ轍を踏まぬよう、社会で生きやすくするためにどうしたらよいかを、しっかり学べる環境にて、療育を受けてほしい。そう願っています。


 発達障害に特化したワークシートやSST、ADHD対策グッズは世の中にたくさんあります。大型書店(小さい書店だと扱いが薄いし、ネットだとイマイチ何がお子さんに合うか分からない)に行き、教員用の専門書の棚に行くと、色々な特別支援系のワークシートがあります。


 「宿題をやれって言ってもやらない💢」と思っていたら、お子さんにはハードルが高くて、どうしても取り組めない(低学年はその困り感を伝える表現力がなく、中学年以上になるとプライドが優って『できない』と言えないということもあります。)場合があります。普通級にいる場合、宿題の量を減らしつつ(漢字ドリルは繰り返し練習をなくすとか。その方が集中力が上がるのか、最初、漢字テストで30点?とかだったところ、メキメキ伸びて100点を取り続けられるようになるパターンも見ました。)、障害特性に応じたワークシートの家庭学習に取り組むといいでしょう。お子さんと一緒に本屋さんに行って「これやってみたいかも。」と言ったものをチョイスするのが良いですね。特に、算数の知識理解の低さに目が行きがちかもしれませんが、字形に問題があるお子さんは、国語のごく簡単なひらがなの書き写しから始まるようなワークシートに取り組むと良いかもしれません。どの教科も、「読めなきゃ解けない」のが基本です。故に、「国語」が全ての学びの基礎だと思っています。


 お友達トラブルにお悩みでしたら、SST(ソーシャルスキルトレーニング)と書かれているワークシート。繊細さんにはアサーショントレーニングと書かれているワークシートに取り組むと良いでしょう。


 忘れっぽい、生活習慣が確立しないお子さんには、ランドセルの内蓋に大きく目立つ色で、持ち帰り忘れのないようにチェックリストを入れておくと良いでしょう。また、プリントがぐちゃぐちゃだし、引き出しに入れっぱなしだったりする際には、複数の色分けとラベリング(マジックで書くだけでOK)した「チラシ」「せんせいにわたす」「おうちのひとにみせる」「べんきょう」といったファイリングができるようになると良いかと。それをお家でどこに置くのかも定位置を決めておくといいですね。また、市販の忘れ物チェッカーを持たせたり、掲示板型になっているチェックリストを使わせたりすると良いでしょう。Amazonなどのネットショッピングで「ADHD 対策」など、特性に合わせたキーワードで検索すると、出てきます。


 聴覚過敏なお子さん、複数の兄弟がいるご家庭では、遮音ヘッドホンとタイマー(目に見えて目盛りが減るものがあります)を活用し、集中できる環境を作ってあげる。


 このように、様々な対策が世の中にはあります。障害特性をよく理解することで、グレーな子も診断がおりた子も、生きやすくしてあげてください。