大宝律令は唐(今の中国)の律令制度に習い、
日本で初めて法律を整え、体系化した法典です。
大宝律令は大陸の思想に影響を受けながらも
古代から伝わる日本社会の思想を織り込み、
つくり上げたものです。
例えば「家父長制(最年長の男性を家長とし、
家で絶対的な権力を持つ考えかた)」は大陸の
古代からの思想で「父系社会(父から息子へ財産や
地位を継承する)」と密接した関係です。
大宝律令も家父長制の考え方に影響を受けて
家族の運営から国家の体制まで男子優先と
読める条文がありますが、大陸のようにそれを
徹底したものではなく、日本の思想に合うよう、
柔軟になっています。
例えば前回紹介した継嗣令第一条には、
凡そ皇(天皇)の兄弟(姉妹を含む)、皇子(皇女を含む)をば、
皆親王(内親王を含む)と為す。(女帝の子も亦同じ。)
(※内親王は女子の親王のこと。)
必ず男子絶対ではなく、女子も男子と同じ立場であることを
示しています。これは大陸では到底受け入れられない思想です。
ここで分かることは、大宝律令が作られる前は
「父系社会」ではなく「母系社会」だった、
ということでしょう。
なぜなら、古代日本が「父系社会」であれば大陸の思想を
そのまま受け継げばよいだけなのに、「母系社会」だからこそ、
大陸の思想との折り合いをつける工夫、ととれるからです。