「過保護」のもうひとつの特別な例、

というのを上げておきましょう。

 

モニタリングで自宅を訪問し、

姑(要介護者)と嫁(介護者)のふたりと

同時に会っているときに姑が言いました。

この姑は口を開くと、嫁の自慢話をします。

「本当に良くしてくれる嫁で」。

 

これです。

頭に「?」が浮かんでいる人も多い

ことでしょう。

 

これは「嫁に聞こえるように」と

いうのがポイントです。

他人に向かって嫁を自慢するのを

嫁が聴いたらどう思うでしょう。

(少し手抜きしたいな)と思っても、

できなくなります。

他人様の目がありますから。

 

「他人様」を「サービス事業者」と

言い換えても良いでしょう。

 

デイサービスが迎えに行くと

いつも出かける準備は完璧です。

「本当に良くしてくれる嫁で」と

職員に姑は言いました。

職員も「良い嫁さんですね。

こんな嫁さん、今どきいませんよ」と

同調しようものなら、嫁としては

もっと手抜きできなくなります。

 

分かりやすい言葉で言うと、

これを「ほめ殺し」と言います。

 

どうでしょう、これが一見して

一生懸命介護をしている介護者の

本当は危険なところです。

こういう関係性にケアマネジャーは

アンテナを張っておくことが大切です。

 

こんなケースに出会ったら

私たちはどうすれば良いでしょうか。

家族関係のニーズの一番初めを

思い出してください、

「弱者に寄り添う」が解決策です。

 

この場合、もちろん嫁が弱者ですから

嫁の味方をすべきです。

本当のところはどうなのか、

徹底的に聴いて聴いて、

聴きまくる必要があります。

 

愚痴をこぼしてもらうことで

介護者のストレスが解消することも

ありますし、サービス事業者も

嫁のことを、ことあるごとにねぎらう

要介護者のほうをたしなめる、

といったことも必要でしょう。

 

とにかく、弱者の味方になって

孤立を防ぐ必要があります。

 

はじめに「特別な例」と書いたのは、

今や、こんな嫁は希少な世の中だからです。

「介護なんてしない」てなことを言う

嫁のほうが大多数かもしれません。

今や「イヤなものはイヤ」と、

はっきり言える人のほうが

圧倒的多数でしょう。そうでなくても

一人暮らしや高齢者世帯が増える中、

2世代同居の家族も少なくなっています。

ゆえに「家族関係」のニーズに出会うのも

以前と比べると少ないわけです。

 

ただ、0にはなりませんから、

気をつけておく必要は

今後もあり続けるでしょう。