ニーズ⑰は、「家族関係」です。

このニーズをつかむには

多くの経験や観察力や

気づける感性が必要です。

実は私も、このニーズを

つかむのは、あまり得意ではありません。

 

ただ、このニーズをつかむと

困難と思っていたことがスルスルと

ほどけていくような感覚を覚えます。

 

「家族関係」のニーズは、

要介護(要支援)状態であるために

家族どうしの関係に変化が

現れていて、それが生活上の

問題になっていることを言います。

 

家族関係が課題になっているかどうか、

よくわかるポイントが2つあります。

ひとつは、「介護放棄」です。

 

ケアマネジャーが必要だと考える

サービスを介護者が拒否する。

それなのに、決して自分で介護

しようとしない。

例えば、尿失禁しているのに

紙パンツを替えられないまま

になっている。

これは分かりやすい介護放棄の例ですが、

ここでは要介護者が介護者より

弱い立場になっている

という変化が起こっています。

 

このようにサービスを受け付けないのは

どうしてか、ということを突き止めることが

必要です。

例えば、経済的にサービスを受けられない

ということであれば、以前お話しした

「経済」のニーズが絡んでいますから

それを解決する方法を提案する必要あります。

 

経済面では問題ないのに

サービスを受け付けない場合、

純粋に、この家族関係にニーズがある

ということになります。

 

元気なころは浮気ばかりしていて

ほとんど家に戻らなかった夫への復讐

として、妻が介護放棄をしていた、

といった例がありました。

 

こういう情報を得ることは

ひとつの壁です。

よほど信頼関係がなければ

しゃべってもらえるものでは

ありません。

難しいアセスメントのひとつです。

 

さて、介護放棄の理由が

分かったところで、

ケアマネジャーとしては、

どうすればよいのでしょうか。

 

この場合は、妻に寄り添うことで

突破口が見つかる可能性があります。

長年我慢して連れ添っていたことを

認めてあげるという「共感」が功を奏する

ことがあるのです。

 

家族関係を解決するには

「弱いほうにつく」という鉄則があります。

弱者に対して・ほめる・認める・ねぎらう、

といったことで、弱者には力を、強者には

弱者の新たな価値を見つけてもらえるように

仕向けるのです。

 

さっきの例でいえば、

介護放棄を受けている

夫が弱者のように見えますが、

長年我慢してきた妻も

同じ弱者と考えても良いでしょう。

 

どういう理由かわかりませんが、

離婚することもなく、

要介護状態になってもなお、

施設に入れずに一緒に住んでいる。

このことを認めてあげることは

できないでしょうか。

 

(もし、自分なら…)と考えることが

共感への出発点です。

共感することで、介護者は

自分のことを分かってくれる人、と

認識し、そこで初めてケアマネジャーの

提案を受け入れる心が芽生える

土壌ができてくるのです。