脳の器質的な変化によって

その場、その場で、自分がどう

振る舞えば良いか分からなくなる

のが認知症(認知障害)、

というお話をしたのですが、

もう少し、認知障害になられた人の

心理状態を推察してみましょう。

(こういうのを”寄り添う”と

言ったりします)

 

その場に見合った振る舞いをするためには

「その場がどんな場であるか」と

きちんと理解しなければいけません。

公衆の面前で、家と同じように

パンツ一丁になっていてはおかしい、

ということです。

(さすがにこの時期、そういう人は

いないと思いますが(笑))

 

状況が分からないと

自分がどうして良いかも分からなく

なります。ここで起きている心理状態は

「混乱」です。

一生懸命分かろうと努力するのだけど

それができない状態です。

それが続くとやがて「不安」な気持ちが

わき起こってきます。

 

状況は刻一刻と変化していくものです。

こうしてブログを書いている私も

時間に注意を払いながら、

(そろそろ止めなきゃ)と考えたりします。

寝るまでに風呂に入って、食器の片付けをして

子供の宿題を見てやって…と、

次々に課題をこなさなければいけません。

さらに1つの課題を細分化すると

たくさんの小さな課題が積み重なっている

ということが分かると思います。

 

「次にこれをやる、次はこれ」と

分かっていれば良いですが、

それができなくなる、そうすると失敗する、

失敗に失敗を重ねる。そうしてやがて

失敗を恐れる。「不安」になる。

これが「怯え」に変わっていきます。

 

この怯えた気持ちをそのまま持って

いられる人は強い人です。

たいていの人はそういう場を

解消しようとするでしょう。

 

どうやって解消しようとするかというと、

「他者へ攻撃的」になるか「内にこもるか」

ということになります。

 

自分の失敗を人に転嫁し、

自分の立場を守る。

これが「他者への攻撃」の例です。

 

状況に向き合おうとしても失敗ばかりするから

関わらない。振る舞おうとしない。

これが「内にこもる」です。

 

それぞれの性格にも依りますから

どちらの行動が出るかは分かりません。

でも、根は一緒です。

 

だから、認知障害を疑ったら、

まずは「安心」できる場や関係を

築くことが大切になります。

 

ケアの手法として

「パーソン・センタード・ケア」

「バリデーション」

「ユマニチュード」

などが流行っていますが、

いずれにも共通するのは

認知症になった人に対して

「不安、不快な気持ちにさせない」という

ケア側の姿勢が問われている、

ということです。